内容説明
「古え」は、いかにして語られたのか―。近世中葉、幕府・藩の統制のもと社寺の秩序化が行われるようになると、社寺の復興、復権などを目的として「由緒」が希求されるようになった。それら「由緒」を説く任にあたったのは、神職や僧侶、そして神道家(神学者)であった。石上神宮・大神神社・大和神社といった山辺の古社をはじめとして大和国諸社の由緒記を述作した在地神道家、今出河一友。由緒正しき伝―「失われた古伝」、「俗説とは異なる真の伝」の創出を企図した彼は、いかなる方法を用いて、歴史的・文化的正統性を描き出したのか。また、その言説は、地域社会において、どのように受容され、伝播していったのか。「古え」「淵源」を語る営みの意味を捉えかえす画期的著作。
目次
第1章 今出河一友概説
第2章 今出河一友による石上神宮由緒記の生成―「家の由緒」との連関
第3章 『大三輪神三社鎮座次第』の成立と言説の共有
附論 『大乗院寺社雑事記』を中心に見る率川神社―中世期に形成された像と機能
第4章 『大倭神社注進状並率川神社記附裏書』に見る大和国諸社の由緒再編
第5章 近世期穴師神社における由緒生成と古伝の「再発見」
第6章 近世における石上神宮鎮魂祭儀礼次第生成の位相
附表
翻刻資料 國學院大學図書館所蔵『鎮魂祭略儀式』
著者等紹介
向村九音[サキムラチカネ]
奈良女子大学文学部卒業。奈良女子大学大学院人間文化研究科博士前期課程修了。奈良女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程、満期退学。博士(文学)。現在、日本学術振興会特別研究員。専門は日本中世~近世の文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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