内容説明
キリスト教徒、イスラーム教徒、ユダヤ人、コンベルソ(改宗ユダヤ人)が、対立と緊張をはらむ異文化コミュニケーションを繰り広げたのが中近世スペインである。本書ではマイノリティ、「内なる他者」としてのユダヤ人とコンベルソに焦点を合わせ、中近世スペインを中心に現代までいたる対立と「共存」の歴史を探る。追放後のユダヤ人が構築したグローバル・ネットワークにも配慮し、多彩な角度からスペインのユダヤ人の歴史を検証したい。
目次
「マイノリティ」としてのユダヤ人
1 セファルディームとスペイン
2 「共存」の時代
3 ユダヤ人共同体の基本構造
4 ユダヤ人追放へ向けて
5 追放後のセファルディームとコンベルソ
著者等紹介
関哲行[セキテツユキ]
1950年生まれ。茨城大学人文学部卒業。上智大学大学院文学研究科博士課程修了。専攻、中近世スペイン史。現在、流通経済大学社会学部教授
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
12
アル・アンダルスでの共存からカトリック両王による迫害と追放、そして19世紀以後の再発見と国籍付与まで、大きく揺れ動いたスペインのユダヤ人問題を概観する。それは著者が述べるように、「マジョリティ」が「マイノリティ」をいかに包摂するかの歴史でもある。また批判の多い異端審問についても、王国全土で実施されたことにより、モザイク国家スペインの統合に役立ったなどという評価も。スペインの黒い「神話」を相対化するためであろうが、人種差別に塗れた「血の純潔規約」を、「社会革命」とまで評するのはいささか危険な気もする。2022/01/23
うえ
3
「スペインを中心に地中海世界に展開したユダヤ人は、セファルディーム…と呼ばれる一方…東ヨーロッパ世界に拡散したユダヤ人はアシュケナジームと呼称された。…七世紀以降ゴート王権は教会と結んで、一連の反ユダヤ法を制定し…ユダヤ人の強制改宗すら命じられている。…1391年の反ユダヤ運動は、主要都市のユダヤ人共同体に壊滅的な打撃を与え、セビーリャやブルゴスなどのユダヤ人人口は十分の一に激減した。セビーリャだけでも約四千人のユダヤ人が虐殺された…16世紀スペインのコンベルソは…多くが異端審問裁判で火刑に処せられた」2024/03/05
monuke_4
0
ユダヤ人共同体の寡頭支配やユダヤ人、コンベルソ間の不信と軋轢等、ユダヤ人の歴史を俯瞰的に読み解ける。信仰する神の解釈を異にするだけで、争いと虐殺が生まれるならば、神と悪魔は同義である。2019/02/08