内容説明
2001年~2015年。認識論的な問いと新自由主義の時代状況が重なる15年間を対象にして歴史学の方法に関する新しい論点と方向性を示し、歴史学の現在とその課題を照射する。
目次
序論 歴史学の現在―二〇〇一~二〇一五年
第1章 歴史把握の方法(新自由主義の時代と歴史学の課題;グローバル・ヒストリー―可能性と課題;下からのグローバル・ヒストリーに向けて―人の移動、人種・階級・ジェンダーの視座から;植民地責任論;帝国主義と戦争)
第2章 「主体」の“問い方”をあらためて問い直す(ジェンダー1―男性史とクィア史;ジェンダー2―植民地主義との交錯という視点から;「民衆」の問い方を問い直す1―朝鮮近現代史・日朝関係史から;「民衆」の問い方を問い直す2―日本近世史研究から;サバルタン・スタディーズの射程;カルチュラル・ターン後の歴史学と叙述)
第3章 「生存」/「いのち」の歴史学(「生存」の歴史学;「いのち」とジェンダーの歴史学;福祉の歴史学;災害と生存の歴史学;所有と利用の関係史―土地と水を中心にして;戦争/平和と生存―アジア太平洋戦争を中心に)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆう。
24
とても難解でした。2000年代に入って新自由主義が時代に大きな影響を及ぼしている中で、歴史学はいったいどのような役割を果たしてきたのか、また果たせるのかを考察した内容です。グローバル・ヒストリーの可能性や主体の捉え方からジェンダーと民衆を改めて問題提起していたり、生存の歴史学を考察していたりしています。僕は歴史の把握を階級闘争の視点から見ていく必要性を感じていますが、この本は従来のマルクス主義歴史学を乗り越えようとしている意欲作だと思いました。しかし自分の勉強不足を痛感しました。2017/12/29
アメヲトコ
4
主として2000年代以降の歴史学研究の論点を整理したシリーズの第1巻。良くも悪くも歴研カラーが強いですが、研究の単なる羅列ではなく評者の問題意識に沿った整理がなされているので勉強になります。また節が2つごとに大まかなペアになっており、一つのテーマを別な切り口から見る構成の妙もあります。現代的課題ということもあって、近現代の研究への言及が多いですが、近世史からの節もあり。2018/08/15
秋津
0
2000年代歴史学の現在と今後の課題を「歴史学の方法」を通じて考察し振り返りましょうと。歴史の「主体」をどうとらえるか、歴史学と我々が生きている時代をとう関連させるか。国、社会、民衆など、歴史学におけるアクターとその行動を丁寧に、そして時代といういわば「縛り」を超えて歴史とどう向き合うか。ジェンダー、植民地、災害などのキーワードを通じて勉強勉強。2017/11/24