内容説明
二日間の戦闘を読み解く。海水みな赤し―唐・新羅連合軍の前に倭国の百済救援作戦は打ち砕かれた。日本の国家形成途上に起こった壮大なパワーゲームを検証し、古代史の通説を覆す力作。
目次
プロローグ 捕虜たちの生還
第1部 白村江への道
第2部 検証・白村江の戦い
エピローグ 敗戦史観を見直す
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Koichiro Minematsu
49
古代の倭国のことは、残されている書で理解するしかないことだが、歴史書家の見解も様々と思うが、この白村江の戦いほど、謎すぎる。百済支援という通説だが、人質の豊璋を帰国させたことに意味があるとしか言えない。それで倭国はどうしたかったのか。2023/07/14
巨峰
18
古代東アジア最大の水戦をそれ以前の国際情勢を含め解き明かす。史書を元に解く部分は面白いが、作者が想像力で類推したところは説得力がたりないかなあ。2013/12/12
みのくま
9
本書はスタンダードな歴史観からは外れるものなので、どれ程本書の主張に妥当性があるかは判断できない。特に金春秋や中大兄の即位が遅れた理由などは非常に眉唾であり、どうも納得できなかった。ただ、白村江の戦いにおいて倭と唐の戦力差は大きくなく、むしろ倭の方が水軍は多かったという事実。また、白村江の「敗戦」は、ぼくたちが思う程「敗戦」ではないというのも目から鱗である。むしろ古代日本の形成途上の三大事件(大化改新・白村江・壬申の乱)として、また古代東アジア全面戦争の一局地戦として白村江を捉える、というのは説得的である2021/05/26
はちめ
8
朝鮮半島側の歴史が長々と語られるのはいたしかたないとして、肝心の日本側の歴史に関する掘り下げは少ない。一体なぜ倭朝廷は朝廷自体を福岡に移してまで百済を救わなければならなかったのかに関する説得力のある説明がない。中大兄皇子の即位に花を添えるというのは説得力がない。 この著者は定説に対してとりあえず反論し、奇説を主張する傾向があるので、日本古代史の入門書としてはおすすめできない一冊だ。☆☆★2020/05/10
isao_key
6
7世紀の中頃朝鮮半島で起きた百済への救援を目的とした倭と唐との戦争が白村江の戦いである。この本を読んで初めて知ったことが多くあった。倭国に仏教が伝来したのは538年だが、これは百済の聖王が倭を梁の冊封体制下に組み入れるために贈ったのだという。儒教、易学、暦学、医学などの博士が定期的に百済から倭国に派遣されたのも、軍事援助の報酬という意味合いがあった。また白村江の戦いで倭国が唐に敗れたのは、通説の言う物量的な差ではなく、倭国が明確な戦略目標を欠き、全軍の意思統一を行えないまま戦闘に入ったことが大きいという。2012/10/07