内容説明
帝への授戒、女人禁制、政争、天災。南北朝合一、明徳・嘉吉の乱…戦乱の中世を生きた一人の天台僧の記録『鎮増私聞書』。そこから浮かびあがる仏教界と庶民の姿とは。
目次
第1章 鎮増というひと
第2章 円頓戒復興
第3章 法華経直談
第4章 時代の目撃者として
第5章 戦乱の世に生きて
第6章 鎮増と書写山の周辺
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
noémi
6
南北朝時代に鎮増という天台宗の僧が書いた「私聞書」 。15世紀当初の室町という時代の世相、風俗、価値観など出家の目で観察し、考察したことが書かれている。日本人は、仏教をベースにした民族であるということを恃みにし過ぎて案外、仏教も坊さんについても知らないことが多い。ここで改めて「お坊さん」とはどういうふうな変遷を経て成立するものなのかを知った。天台宗は密教と顕教、両方を柱とした宗派だと知っていたが、その中でもいろいろと流派があり、結構いろんな価値観を含んだ宗教団体なのだと知って興味深かった。2018/03/11
黒い森会長
5
室町時代のお坊さんのお話。すごく読む人を選ぶと思う。著者は、工夫しているものの、地味ではある。「鎮増私聞書」が原本。天台律僧の生涯と、僧侶の活動としての「直談」の内容。同時代の南北朝合一から嘉吉の乱に対する感想。そして、興味を引いたのが、書写山と琵琶法師との関連。先に、この著者の猫の本を読まなければ手に取らなかったと思う。2020/02/19
空木モズ
0
柔らかい文体で読みやすかった。でも、この本で扱われている人物である鎮増という人が語っているという体の文章であるだけに、よく分からない場所もあった。一応、その事はあとがきで断っていらしたけれど、むしろ断っていらしただけに女性の作る同人誌の注意書きを思い出した。2015/03/26