講談社現代新書
芸術とスキャンダルの間―戦後美術事件史

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  • サイズ 新書判/ページ数 278p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784061498549
  • NDC分類 702.06
  • Cコード C0271

内容説明

芸術の世界では、常に「聖」と「俗」が絡み合う。素晴らしい作品として認められていたものが、「俗」というスキャンダルに巻き込まれるときがある。「聖」なるものであるがゆえに、贋作、盗作、盗難という「俗」の対象になりやすいのである。たとえば、贋作事件を調べていると、なぜか、贋作者は「これは俺が贋作したものだ」という印をどこかに残す。これは贋作者のいたずらというより矜持であろう。バレることを承知して作っているのである(本文より)。事件になったがゆえに、世に現われた美術作品の記録。

目次

第1部 贋作編(天才詐欺師・滝川太郎―なぜ、見抜けなかったのか;ルグロにだまされた国立西洋美術館―国際的手配師の暗躍;謎の佐伯祐三現わる―なぜ突然、大量に出てきたのか;永仁の壷という捏造―陶芸界最大のスキャンダル;佐野乾山騒動―まっぷたつに分かれた真贋の行方;北大路魯山人の怪―素人は手を出すなの教訓;三越事件と古代ペルシア秘宝展―業績挽回策が裏目に;贋作を擁護した奈良博―ガンダーラ仏をめぐる官民対立;棟方志功には、なぜニセモノが多いのか―公になった四つの事件)
第2部 盗難・裁判編(名画盗難と三億円強奪事件―日仏をまたにかけた国際窃盗グループ;ロートレックの「マルセル」盗まる―時効の壁にはばまれた解明;昭和天皇コラージュ版画問題―右翼にひるんだ美術館;模型千円札裁判―ニセ札か芸術か;パロディに著作権の壁―白川・アマノ裁判のもたらしたもの)

著者等紹介

大島一洋[オオシマイチヨウ]
1943年岐阜県中津川市生まれ。早稲田大学第一文学部美術専修科卒。大和書房を経て、平凡出版(現・マガジンハウス)に中途入社。『週刊平凡』『平凡パンチ』『ダカーポ』『鳩よ!』などの雑誌および書籍編集にたずさわる。現在はフリー編集者&ライター(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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はまだ

35
芸術作品をそれ自体だけで鑑賞することはできない。ややこしくいうと、目は、情報に徹底的によごされた脳に従属しているので、無心に何かを見るということは原理的に不可能なんです。たとえば、誰が書いたかなどの情報なしに絵を見ることは、たぶんもうできない。だから、真贋論争は重要なのです。しかし、ときに、そんなものを飛び越えて感激し、少し遅れて「これは本物だわ」と思えるものもある。その枚数を増やすのが私の夢であり、あなたの夢です。後者は知らんわそれは。とはいえ、よくまとまった本。あと、芸術と法律の話も面白いですね。★42017/11/06

ちくわん

8
2006年8月の本。日本で起きた美術品の贋作・盗難事件をほぼ網羅。胡散臭過ぎる人々が金につられて美術品に群がる怪しすぎる世界。ホンモノ・ニセモノが主観で定まる素人は決して踏み入ってはいけない世界。巻末の年表含め、面白かった。2019/06/06

bouhito

6
究極の美とはまったく役に立たないものである。芸術は役に立たないものの創出であり、作品は高額な値段(役に立つ通貨)にかわる。錬金術だ。だからこそ、芸術には模倣・贋作・その他諸々のスキャンダルがつきものになる。数あるスキャンダルの中でも、「千円札の模型」の話が、最も考えさせられた。それは通貨への批判なのだけど、通貨と無縁でいられる芸術(美)などこの世界に果たして存在するのだろうか。そこに自己矛盾を感じた。芸術方面の知識が、ギャラリーフェイクしかない私でも楽しめる1冊。2016/05/02

m

3
山田五郎のYouTubeで見たばかりの、滝川太郎の話があったので。価値があるものには切っても切り離せない贋作問題。技術の発達に伴い、贋作なのに本家超えしてしまうなんてこともありそう。盗難や著作権問題など知っておくとより美術が楽しめる。2022/11/22

伊野

3
贋作、盗難、果ては著作権の問題まで、芸術とスキャンダルの間にある問題は、実行者は勿論のこと、審査する側にも疑義がある場合があり錯綜としている感があった。また、赤瀬川の偽札事件の項で「芸術は法律で裁けない」とあったが、確かに現代アートの意図的なコンセプトの表出は、たとえそれが犯罪を企むものでなくても、法の規定に違反してしまえばそれまでとなってしまう。それはそれでお互いの立場が違う以上、ある程度は仕方ないことであると思うが。2018/01/16

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