内容説明
時は1940年、フランス中部の農村。戦時下という特殊な状況で、普通なら決してあり得ない出会いがあった。パリを脱出してきた上流社会のスノッブな四人組と、彼らを泊める羽目となった若き農夫とその母親。村の知恵おくれの青年や隣人一家も巻き込み、のびやかな田園風景の中で繰り広げられた泣き笑いの末に待っていた、想像を絶する結末とは…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
桜もち 太郎
9
今まで読んだサガンと全く違った印象。戦争でパリでの生活から逃げ出す社交界で生きる男女四人。たどり着いた場所は田舎の農家。そこで人間本来の生き方を感じる。しかし元の生活に戻らなくてはならない。それは定まった運命なのか。貴い労働、愛を知った生活を諦めて「逃げる」。最後の2ページが衝撃的。パリ社交界をあざ笑うことができるようになった彼らの一番大切な、そして望んだ「逃げ道」だったのかもしれない。人間本来の生き方はどこにあるのか、そう思える作品だった。帯にある「コメディ」とは少し違い考えてしまう一冊だった。2016/04/16
雛
6
生きていく中で人は皆必要に迫られて逃げ道を見出していく。自尊心のために。絶望から我が身を守るために。逃げ道を帰る途中だった彼らに待っていた運命は・・・。2016/10/11
しょこ
1
ただ楽しんで、何かを読み取ろうとしないで。とサガンがコメントした本。ユーモアがたくさんで思わず笑っちゃう。登場人物の個性も多様にわたっていて、サガンの観察力と人の本質を見抜く力に感嘆。複数の異色の人物が出てくるとはいえ、書いてる人が一人なら共通する色だか臭いだかが微かにするものだけど、それぞれが純粋原液で、それがリアリティーを出していて面白さを増している。2013/06/06
シン
1
WAWⅠの影響をうけた作家たちを失われた世代というが、サガンは第二の世代といえようか。本作はサガンに不幸が連続で訪れて、そんな折気分転換のために書いたらしいが、サガンも登場人物同様逃げ道を探していたのだろうか。パリから逃げる際に偶然居合わせた男女4人が、田舎に滞在してあまりの環境の違いにショックをうけてしまう。パリ上流社会の常識が非常識なのだ。ここは働かざるもの食うべからずの世界なのだ。明暗を分けるのは、自分の価値観・モラル・プライドを捨てられるかどうか。ブリュノーは結局はスノッブだった。2012/05/25
shizu
0
人の矛盾や心理を幸せに満ちあふれた様に書いてあるけれど 顛末は厳しくあっけない。 喜びも悲しみもにじむような煩わしさも努力も感無量感も 戯言なのかな。 逃げ道は存在するのかな。