出版社内容情報
ケ、ケガレ、ハレという普遍的な生活パターンを反映している文学や映画は我々に感動を与える。その生の構造の根拠を人間の記号過程から捉え、一方で、ケガレを排除する日常への見直しを考察する。
内容説明
文学人類学は、文学の中核に人類学的な生のパターンを見出す試み。そのパターンとは読者が文学に感動する源であり、日本民俗学の発見したケ、ケガレ、ハレに対応する。この三極構造は普遍的で、儀礼のパターン「離反、移行、合体」や知識社会学のノモス、カオス、コスモスと相似形をなし、その根拠が人間に共通する記号過程にあることを示す。また、日本的生の根源にある気の循環として、ケガレの排除を不可避とする日常の構造を相対化する契機を言語効果に探る。西洋と日本の知見に接点を見出し、未踏の領域に誘う刺激的な論考。
目次
1 文学人類学とはなにか
2 ケの思想―日本的生の形
3 『夜叉ケ池』―ケ、ケガレ、ハレと文学
4 ケガレとカオスと移行―三つの相似形
5 文学人類学的読み―イーザー、フライ、ジェイムソンをめぐって
6 透明な三角形―汎記号過程論にむけて
7 中性的人間―文学人類学の射程