内容説明
人のこころのたどるはるかな旅路には、たちむかわなければならない嵐があり、越えなければならないいくつもの峠がある。本書はひろい視野をもつ体験ゆたかな一精神科医が、あたたかい筆致で人のこころの一代を語る。「結婚を決意させた運命の一冊」として、テレビや週刊誌で紹介された、いま、話題の本。紀子さんの愛読書。
目次
第1章 人生への出発
第2章 人間らしさの獲得
第3章 三つ子の魂
第4章 ホモ・ディスケンス
第5章 人間性の開花
第6章 人生本番への関所
第7章 はたらきざかり
第8章 人生の秋
第9章 病について
第10章 旅の終り
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
molysk
66
人生とは生きる本人にとって何よりもまず心の旅なのである。乳児、幼児、児童、青年、成人、中年、そして老年へと変わっていく人生の段階を、神谷は丁寧に観察する。生命の始まりから成長をとげる人生の前半は、輝きに満ちた時期。フロイトやエリクソンの発達段階理論を参照しながら、自身がかかわったひとびとを例として考察を深める。成熟してやがて老いに向かう人生の後半は、忍び寄る影に向き合う時期ともいえる。からだの衰えに対するこころのあり方について、精神科医である筆者が述べる言葉は重みをもつと同時に、深い愛情も感じさせる。2023/11/03
コージー
60
★★☆☆☆人間は環境と関わるだけでなく、自分の心とも向き合いながら生きている。よって著者は、人生を「心の旅」と称する。この本は、心と向き合う乳幼児から老年期までを、精神医学、発達心理学、哲学などの観点から人間を考察したもの。タイトルから読み手に寄り添った内容を期待していたが、学説的な内容が多かった。またの機会に深めたいと思う。【印象的な言葉】生物は環境に対して単に受動的に従属するのではなく、かえって環境に働きかけてこれを変更し、環境に一定の独自の構造をおしつける。2018/08/01
jam
41
精神科医、故神谷恵美子さんの著作。一般には美智子皇后の愛読書として知られる。作者はハンセン病の方々に寄り添う一生を終えた方でもある。本作は人生のステージにおける心理学的見解を記述しているが、特に「老い」ついての考察は、40年以上の歳月を経ても普遍である。初読の際、人は自らの旅を常に俯瞰すべきとの考えにとても共感した。医療者ならずとも「老い」について考える時、今だからこそ一読する価値がある。人生を見はるかし、次に伝えることは人にしかできない。それが老いであり、愛なのだと作者は言う。新年にあたり再読。2016/01/02
シンシア
22
図書館本のため、期限に間に合わず斜め読み。またいつか、ゆっくり読みたい。2016/01/22
テツ
19
生まれ、そして死ぬまで。人生を歩む上でのこころの動きの諸々について。例外は勿論いくらだってあるけれど、人の内側を豊かにするためには、幸福に導くためには、基本的には生というイベントを自分のものでも他人のものでも肯定しなければならないし、そのためにはどうしたらいいのか、ということ。信仰に基づく必要はない。でも、どうしたって愛が必要なんだよな。愛するという行為にも練習が欠かせないし、ある種のテクニックだってある。それを望み自らのものにしたいと願うところから全ては始まる。人はだいたい愛したいし、愛されたいのだ。2023/04/07