内容説明
かつて創造されたもののなかで、もっとも驚嘆すべき一冊の本、芸術と技術という宝石―。グーテンベルク聖書という人類の至宝を生み出した技術者の謎の生涯と、激動の時代状況を、豊富な資料を駆使して生き生きと描き出した好著。
目次
第1章 色あせた黄金の都市マインツ
第2章 シュトラスブルクでの冒険
第3章 クザーヌスとキリスト教世界の統一
第4章 印刷術発明への歩み
第5章 なぜグーテンベルクだったのか
第6章 聖書への道のり
第7章 金字塔グーテンベルク聖書の完成
第8章 グーテンベルクの名誉回復
第9章 国際的に広がる印刷術
第10章 ルターと宗教改革
著者等紹介
マン,ジョン[マン,ジョン][Man,John]
ドイツ史と科学史を背景とした歴史家
田村勝省[タムラカツヨシ]
1949年、東京生まれ。東京外国語大学、東京都立大学卒業。東京銀行勤務をへて、現在、関東学園大学経済学部教授。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y2K☮
29
悪名高き免罪符を広めたのが印刷術なら、それを糾弾するルターの著書を世界初のベストセラーにしたのもまた印刷術。この革新が筆写人の職を奪った史実はネットの普及が招いた現代の出版不況に重なる。グーテンベルクとはコロンブスであり坂本龍馬。材料や状況は既に整っていたが、実際に資金を集め、リスクを負って実行し、ビジネスとしてやり遂げられるか否かは別の話。後押ししたのは崇高な理念よりも逞しい商魂。そういうもの。母国語に翻訳された古今の名著を誰でも気軽に買えるのは当然の事ではない。そして改めて本は平等と中立の象徴だなと。2018/08/11
まりお
6
活版印刷術を開発したグーテンベルクについて。彼に関する資料は少ないため、作者は15世紀のヨーロッパの歴史や人物から動向を探り、推察する。そのためこの本にはグーテンベルクが生きた時代、特に教皇の選挙、派閥問題など宗教の動きについても書かれている。さらにグーテンベルクの死後、印刷術が広まり、活発化した本の製作、それによる知識がより素早く伝達した世界についても書かれている。この発明が情報の伝達にどれほど貢献したか、ルターによる宗教改革の流れと共によく分かる。2016/11/01
山のトンネル
3
誤訳が多いらしいが内容は充実している1冊。2022/04/13