出版社内容情報
市民の司法参加にはどういう意味があるのか。冤罪事件が繰り返されるのはなぜなのか。本書はそこから、裁判という営みの本質へと分析を進める。犯罪や処罰についての常識を疑い、人間という存在を見つめなおす根源的考察。
内容説明
我々は裁判の意味を誤解していないか。市民の司法参加が義務として捉えられる日本と、権利として理解される欧米。この違いは何によるのか。また、冤罪事件が繰り返されるのはなぜか。本書はそこから分析を進め、裁判という営みの本質に迫る。犯罪や責任、処罰についての我々の常識に挑み、人間という存在を見つめなおす根源的考察。
目次
第1部 裁判員制度をめぐる誤解(市民優越の原則;裁判という政治行為;評議の力学)
第2部 秩序維持装置の解剖学(自白の心理学;自白を引き出す技術;記憶という物語;有罪への自動運動)
第3部 原罪としての裁き(自由意志と責任;主体再考;犯罪の正体;善悪の基準)
結論に代えて―「正しい世界」とは何か
著者等紹介
小坂井敏晶[コザカイトシアキ]
1956年愛知県生まれ。1994年フランス国立社会科学高等研究院修了。現在、パリ第8大学心理学部准教授。専攻は社会心理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
120
結構重い課題のような感じがしました。裁判員制度あるいは裁判そのものの考え方などを新書ながらじっくりと説かれています。私はある意味小坂井先生がフランスに住んでいるということで日本での裁判員制度の将来がどうなるのかということを案じているのでしょう。裁判というと英語の「12人のいかれる男」をすぐ思い出してしまいます。およそ日本ではあのようなことは起きないと思います。2021/02/15
マエダ
86
”本書は裁判の常識に疑問を投げかける。裁判と呼ばれる社会制度が担う本当の機能は何なのか。裁かれるのも人ならば裁くのも人だ。この当たり前の事実をもっと見つめよう。神ならぬ人間が行う裁きとはなんなのか”答えの存在しない問いに正対し自分自身の答えを探し出す。ほんと良い本である。2017/12/21
mitei
44
裁判で出てくる情報が必ずしも真実でもないし、専門家と素人と比較してもそれほど結論が変わらないし、専門家に引きづられる傾向があるので裁判員制度はほぼ無意味な状態だし、冤罪も一定の確率で起こるしでタイトルの人が人を裁くのは難しいと感じた一冊だった。本書ではさらに海外の裁判のやり方などが参考として挙げられていてよかった。2012/03/31
さきん
32
裁判員制度が導入された際、あくまでも多数決や人数、情報の保護など、技術的なところにに興味がいったが、著者は根本的に人が人を裁くということがどういうことなのか問う。犯罪を起こしたときの犯人の心理がわかるだろうか、嘘をつく人を見分けられるのか、裁判官はどういう仕事をし、どういう判決をくだす傾向にあるのか、一人の冤罪を救うか、一人の犯罪者を野に放つかなど。100%の真相は誰にも分からず、真実らしきものを政治的に決めていく行為こそ裁判ではないかと問う。2017/02/20
佐島楓
28
裁判員裁判制度に疑問を持っていたので、読んでみる。内容はもっと突っ込んだ、人間の判断力や記憶力のあいまいさ、犯罪そのものの定義など、根源的なものだった。読み物として戦慄しながら読了。ミステリを書いていらっしゃる方なら、考え方のひとつの指標になるのではないだろうか。2012/01/19