内容説明
「法の支配」の語は近年、総理大臣をはじめ多くの人に使われるようになったが、正しく理解されてはいない。「法の支配」は、明治憲法の「法治国家」に代えて日本国憲法が採用した統治原理である。法律の九割を占める行政法を素材に法治国家との相違を明確にし、歴史と理論の両面から国家と社会のあり方について考察を加える。
目次
第1章 社会と国家―行政法とは何か
第2章 近代国家の原型
第3章 立憲君主制―ドイツ帝国と大日本帝国
第4章 法治国家とは何か
第5章 法の支配の源流
第6章 法の支配とアメリカ合衆国憲法
第7章 法の支配と行政法
第8章 議院内閣制とデモクラシー
著者等紹介
大浜啓吉[オオハマケイキチ]
1946年生まれ。早稲田大学政治経済学術院教授。法学博士。専攻、行政法、憲法、土地法(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
34
法治国家は、立憲君主制における統治原理として誕生したものであることを深く認識しておく必要がある(ⅴ頁)。個人の尊厳→社会の自律→国家の補完が近代国家の形(ⅵ頁)。立憲主義とは、政治権力の恣意的な支配を制限する制度(35頁)。市民とは国家構成員としての個人(41頁)。人間は社会の中で生活するので個人が尊厳をもって幸福に暮らせる社会を作ることが重要。国家は個人が自己実現できるように平和な社会を護り支える(77頁)。法の支配の原理下では、法律は国民の意思、公共問題を解決する手段。2016/07/25
ゲオルギオ・ハーン
22
2016年2月発行の行政法入門書。憲法の点から歴史を見ていきながら日本が参考にした各国の行政について、法の支配についての考え方を説明してもらえて面白かったです(十分には理解できなかったのが申し訳ないですが)。何度か出てくる文句である「憲法が国を作るのであって、国が憲法を作るのではない」というのは説明を読んでいくととても納得できました。今の日本の政治や行政のチグハグさも制度を丁寧に整理して説明しながら指摘しており、政治の本として読んでも面白いと思いました。2021/04/18
Haruka Fukuhara
12
再読。結局あんまりよくわからなかったというか、考え出したらかえって疑問がたくさん出てきた感じ2017/09/08
ヤギ郎
12
行政法と名のつく法律はない。行政庁(国や自治体)の行う事は全て法律に則っていて、その法律を行政法と呼ぶ(学説によって多少の差異がある)。細かい法技術を抜きにして、法によって社会を動かすことはどういうことかを述べている。法律学で度々話題となる「法の支配」についての記述もある。また、民主主義との関係も述べている。サブタイトルの通り行政法の入門であるが、法律全般の入門書でもある。2016/06/17
Haruka Fukuhara
8
なかなか難解な…行政法は憲法との隣接分野だということを強く認識させられる中身でした。2017/06/29