出版社内容情報
十年に及ぶ異母弟との争い。父の遺書を楯に家産分割を強要する非情。愛すべき「一茶さん」の巧みに隠された本性を明るみに出す。
内容説明
俳人小林一茶、こと百姓弥太郎。その十年に及ぶ異母弟との骨肉の争いを語るものは少ない。父の遺書を楯に家産をむしり取る、欲に憑かれた嫌われ者。そんな弥太郎の主張がなぜ罷り通るのか。そこには契約文書がものを言う北信濃の文治社会の存在があった。史料を読み解き、一茶が巧みに覆い隠した弥太郎の本性を明るみに出す。
目次
第1章 柏原村百姓弥太郎執念の家産分割相続(「取極一札之事」を読み解く;この分割相続は分地制限令の御法度に違反しないのか ほか)
第2章 北国街道柏原宿(北信濃の兵農分離;柏原村と柏原宿 ほか)
第3章 宿存亡をかけた訴訟に勝つ(明専寺住職不帰依訴訟;川東道塩荷通行差し止め江戸訴訟)
第4章 繁栄する柏原宿と不運に見舞われる一茶(富貴なる宿柏原;一茶柏原宿に念願の帰住を果たす ほか)
終章 一茶死して柏原宿入り口に句碑が建つ
著者等紹介
高橋敏[タカハシサトシ]
1940年静岡県に生まれる。1965年東京教育大学大学院文学研究科修士課程修了、文学博士。国立歴史民俗博物館名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kitinotomodati
3
なんとなく好々爺なイメージを持っていた一茶が、泥沼の相続争いなんて意外だった。結構、あくの強い人だったことを知った。芸術家はなべてそんな感じかもしれないが。柏原宿の特殊な成り立ちやら、江戸期の庶民が訴訟でしっかり主張する姿なども興味深い。住職の跡目争いが面白かった。2019/09/12
takao
2
ふむ2018/01/22
中村禎史
2
小林一茶の、異母弟との相続争いを残された記録からたどり、更に一茶が晩年を暮らした故郷信州柏原について史料に基づいて再構成する。 一茶は実母死去のあと江戸で俳諧師となるが、50を過ぎて帰郷し、父の遺言書を根拠に異母弟から土地屋敷を世知辛く削り取る。 柏原村の暮らしや人々の考え方を他の村々との裁判記録などを通じて分析する過程が、歴史学の面目躍如たるものあり、面白い。 印象に残るのは晩年出来た子や妻を相次いで亡くす一茶の境遇だが、その死後句碑建立に異母弟が奔走したと言う箇所が篤実な一農民の姿を伝えて感動的。2017/09/16