出版社内容情報
ヒトラー(一八八九─一九四五)とは何者だったのか。ナチス・ドイツを多角的に研究してきた第一人者が、最新の史資料を踏まえて「ヒトラー神話」を解き明かす。生い立ちからホロコーストへと至る時代背景から、死後の歴史修正主義や再生産される「ヒトラー現象」までを視野に入れ、現代史を総合的に捉え直す決定版評伝。
内容説明
ヒトラー(一八八九‐一九四五)とは何者だったのか。ナチス・ドイツを多角的に研究してきた著者が、最新の史資料を踏まえて「ヒトラー神話」を解き明かす。生い立ちからホロコーストへと至る時代背景から、死後の歴史修正主義や再生産される「ヒトラー現象」までを視野に入れ、現代史を総合的に捉え直す決定版評伝。
目次
第1章 兵士ヒトラー―勲章と沈黙と
第2章 弁士から党総統へ―カリスマの源泉とテロル
第3章 国民的政治家への道―『わが闘争』と党の躍進
第4章 総統兼首相として―一党独裁のなかの多頭制
第5章 「天才的将師」から地下要塞へ―第二次世界大戦とホロコースト
第6章 ヒトラー像の変遷をめぐって―生き続ける「ヒトラー」
著者等紹介
芝健介[シバケンスケ]
1947年、愛媛県生まれ。東京大学法学部政治学科卒業後、同大学大学院社会学研究科博士課程(国際関係論)修了。國學院大學助教授、東京女子大学教授を歴任。現在、東京女子大学名誉教授。専攻はドイツ現代史・ヨーロッパ近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
115
戦後四半世紀を過ぎても関連本が出続けているほどヒトラーへの関心は高いが、逆に神話や伝説が積み重なって真実がわからなくなる。ドイツ史研究の泰斗が独裁者の虚像を洗い直し、膨大な研究や調査のエッセンスをすくい取る。他の伝記でも痛感した政治的天才ぶりが生々しく迫り、この異能の政治家が出現した歴史の可能性を考えてしまう。また戦後ヒトラーがどう評価されてきたかを辿り、わずか12年の政権期にやったことに研究者から大衆まで理解が追いつかない事情を明らかにする。あまりにも巨大すぎる悪に、私たちは今も圧倒されるばかりなのか。2021/12/07
KAZOO
108
以前からこの人物には結構興味を持っていて、ドイツで出版されたヒトラーが現在に生き返る本なども読んできました。その様なこととは別にかなりのヒトラーに関する資料を渉猟してこのような新書にまとめ上げられたということは頭の下がる思いです。むかし幾度か読みかえした林健太郎の「ワイマール共和国」に匹敵するとおもいます。今までに知っていることが多いのですが、ソ連が彼の死を秘匿していたというのは初めて知りました。2022/10/07
skunk_c
88
新書としてはかなり重厚な評伝。歴史状況を押さえながら、ヒトラーの幼少期から末期までをバランス良く記述している。さらに終章でドイツなどで戦後ヒトラーがどう評価されてきたかが整理されており、ここが一番興味深かった。晩年の病がパーキンソン病だったというのは本書で初めて知った。なるほど。ただ気になるところも。著者は歴史家でありながら、何度かヒトラーの運命が大きく変わるところで、ifの話を挿入している。特にミュンヒェン一揆の裁判のところで「(釈放した)罪は重い」とするが、この時点でヒトラーの将来は不明だったろうに。2021/12/06
樋口佳之
66
最終章を膨らましてそれのみで一冊の新書(なのですから)とした方が良かったのかも。/ひるがえって日本の私たちがかつて突き進んだ道も「滅私奉公」の道であったことを、いまこそ思い起こす必要があるのではないだろうか。(おわりに)/「指導者原理」と戦前の天皇制、実際に担った人のパーソナリティは別とすると、結局のところ意外に似通った部分があると感じました。指導者の無謬性に寄りかかり、暴走瓦解していく組織一般に繋がるのかもしれない。2022/01/30
Isamash
45
芝健介・東京女子大教授による2021年発行の著作。ヒトラーの生い立ちから死まで更にヒトラー像研究の変遷まで記されている。本書を手にしたのは多分プーチンという独裁者の実際を知る参考になればとの思い。本書によればヒトラーは独裁者であるが実際の政治は周辺の人間たちの競合関係・力関係性の中で動いていったらしい。とは言え、身内の政敵で処刑された数に驚かされる。そしてスターリングラード攻防戦での軍壊滅の自己責任はむろん、それ以降もドイツ国民の犠牲に全く責任感や配慮を感じていなかったらしいことが恐ろしい。だから独裁者?2022/05/14