内容説明
格差社会、教育問題、愛国心論争、地域の荒廃、解決策はここにある。現実の政治に有効な実践的議論。
目次
第1章 批判や誤解に答える
第2章 コミュニタリアニズムとは何か?
第3章 共通善の政治学
第4章 現代の政治理論との関係と影響力
第5章 家族と教育
第6章 地域社会
第7章 経済政策と社会保障
第8章 国家と国際社会
著者等紹介
菊池理夫[キクチマサオ]
1948年青森県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業、同大学院法学研究科博士課程政治学専攻修了(法学博士)。現在、三重中京大学現代法経学部、同大学院政策科学研究科教授。専攻は政治思想史、政治理論、政策価値論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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樋口佳之
26
現在の日本のリベラルやリバタリアンは、個人の自由や権利がなぜ重要であるかほとんど説明していません。あくまでもそれらは自分のために存在していることを当然のようにみなしています。彼らにとって個人の自由や権利は自分の利益と同じものでしかありません。その点では、彼らは佐伯啓思(『自由とは何か』講談社現代新書、二〇〇四年)のいうように、基本的にはニヒリズムの立場/あー、かなり論争的。2018/05/24
えちぜんや よーた
14
並行してアダム・スミスの「道徳感情論」の解説本を読んでいるせいか、「共通善」の思想が、ぼやけてしまう。コミュニティの成員が熟慮して議論していくという考え方のようですが、何か不自然な感じがぬぐえませんでした。スミスが唱えるように人間の喜怒哀楽の感情をベースに自然な法(民法など)に沿って、法体系や経済体系を構築した方が、社会にとっても人間にとっても優しいような気がします。コミュニタリアニズムは、「中道左派」ともいううらしいですが、何か根拠が弱い。2012/09/17
アイロニカ
6
昨今の個人主義や能力主義への虚無感から、共同体主義改めコミュニタリアニズムについて知っておきたいと思っていた。この本ではその思想が政治や社会に対してどのような認識や影響力を持っているのか、ネオリベやリバタリアニズムを批判する立場から解説している。キーワードは「共通善」で、それは利己的な個人の利益を超えた公共の福祉であり、地域住民が協調して目指す自立的な社会の規範であろうか。しかし、文化や言語の基盤から異なる外国人移住者が更に増えていく現代社会で、理想はどの程度共通化できるのか。未だ議論は深まっていない。2019/10/06
白義
5
最初にコミュニタリアニズムに対するよくある誤解、批判に答えているのが入りやすいですね。アリストテレスまでさかのぼる共通善の思想史にサンデルやテイラーと言った現代のコミュニタリアンまで概説し、更に現実政治への影響、実践まで語っている辺り最高の入門書です。日本だと共同体主義=右、愛国と誤解されやすいですが、むしろ多様な文化共同体の肯定に、相互抹助やケアの重視と中道左派であるのがコミュニタリアニズムのスタンダードです。日本ではあまり実践と絡めて語られていませんが、今後必然的に重要性が増していくでしょう2011/05/26
スズツキ
4
結構よくできているのではないでしょうか。コミュニタリアンの解説としては小林正弥が頑張っているが、個人の思想としてはかなり異質なので、全体的に俯瞰する意味ではこれが良い。特に著者が立場を明確にしているのが良いですね。2016/08/28