出版社内容情報
第一線の実証史学研究者が最新研究に基づき江戸時代の実像に迫る。特に女性が持った力と果たした役割を多角的に検証。通史としても読める全く新しい形の入門書。
内容説明
日本の近世史については、近年さまざまに研究が進展しているにもかかわらず、その成果が一般に知られていない。江戸時代がユートピアであったかのように評されたり、反対に女性が虐げられていた時代であったと強調されたりといった極端な議論が近年も見られる。そこで女性が江戸時代に果たした役割や、女性が時代を担って改革した力について第一線の研究者が実証研究に基づき考察を加えつつ、近世の通史としても読める形でわかりやすく講義を展開する。全く新しい形の入門書。
目次
織豊政権と近世の始まり
徳川政権の確立と大奥―政権期の成立から家綱政権まで
天皇・朝廷と女性
「四つの口」―長崎の女性
村と女性
元禄時代と享保改革
武家政治を支える女性
多様な身分―巫女
対外的な圧力―アイヌの女性
寛政と天保の改革
女性褒賞と近世国家―官刻出版物『孝義録』の編纂事情
近代に向かう商品生産と流通
遊女の終焉へ
女人禁制を超えて―不二道の女性
著者等紹介
高埜利彦[タカノトシヒコ]
1947年生まれ。学習院大学名誉教授。東京大学文学部卒業。専門は日本近世史。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
74
「女性の力を問いなおす」という副題に惹かれて。近世史において女性の姿がほとんど見えてこないという問題を前々から疑問に思っていた。本書を読んでもその印象は変わらず、名を後世に残すような存在は例えば天璋院篤姫のような地位のある女性ばかり。自分でも少し調べてみようと思う。特に文芸分野。2020/02/03
きいち
34
編者らによる通史パートと11人の女性史研究者による尖ったテーマでの講義からなる江戸時代史。それぞれの論考は「あと少し!」と言いたくなる短さだが、いまの近世史研究の豊饒さを伝えたいということなのか。◇なかでも面白く追いかけたくなったのは、遊女の(横山百合子・松井洋子)と富士講(不二道)の女人禁制解除策の話。◇それにしても、女性史でありながら、個人として登場するのは武家ばかり。商家も農民も遊女も、何を考えどう生きたのだろう。◇そして、江戸期の女性の著作って知らない。中古中世となぜこれほど違うのだろうか。2020/02/11
軍縮地球市民shinshin
16
「近世史講義」とはいえ全編女性史を扱っている。編者は学習院大学に長らく勤めていたが、思想が左っぽい。学習院といえども左っぽい教員は仔細に観察すると結構いるのではないか。それはさておき、岩崎奈緒子「第9講対外的な圧力ーアイヌの女性」のみ読んだ。ロシア帝国の存在を江戸幕府が知ったのが1783年。その10年後にはラクスマンがネムロに来航しているので、幕府は大帝国ロシアに対峙することになる。そのため蝦夷地を直轄地としその北限はエトロフ島までとした。なぜならその隣のウルップ島にはロシア人が来ていたから。2020/12/15
さとうしん
16
女性史からのアプローチをメインとするが、近世史の概説としても読めるような構成となっている。第7講での、功績ある奥女中が自らを始祖とする家を立てることが認められていたという話が面白い。武家社会、朝廷、村落、アイヌ、信仰、流通など、同じ江戸期を舞台としていても女性史への切り口に様々な可能性があることを教えてくれる。2020/01/13
かんがく
13
ただでさえ1章ごとが薄くなりがちな、複数研究者がテーマごとに記述するスタイルである上に、「女性」というテーマを無理矢理すべての章に入れているせいでより薄く感じた。近世史の入門書なのか、近世女性史なのか、どっちつかずで物足りない読書であった。2021/12/04