出版社内容情報
「スター建築家」から「顔の見える専門家」へ――。安藤忠雄、隈研吾、谷尻誠……「建築社会学」を探究する社会学者が、来たるべき建築家の職業像を示す。
内容説明
『建築の解体』の刊行から五〇年弱、後期近代の時代にあって、安藤忠雄や隈研吾に代表される従来の建築家のイメージは、見直しを迫られている。ブルデューの理論を用いて、建築家という職業がつくられていくプロセスを描写するとともに、解体していく建築家像の軌跡をたどる。フィールドワークの知見を盛り込み、「街場の建築家」という今後の可能性を最後に示す。
目次
序章 建築家を書く
第1章 建築家とはなにか
第2章 建築家をつくる大学教育
補論1 安藤忠雄伝説の秘密を解く
第3章 建築家と住宅
第4章 後期近代と建築家の変容
補論2 隈研吾―後期近代的建築家像
第5章 建築家の解体と街場の建築家
著者等紹介
松村淳[マツムラジュン]
香川県木田郡牟礼町(現高松市)出身。博士(社会学)。二級建築士。2021年より関西学院大学社会学部准教授。専攻は労働社会学、都市社会学、まちづくり研究。ライフワークとして、人と建築の関係性を総合的に考察する視角としての「建築社会学」の可能性を探究している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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りょうみや
24
著者は建築士でもある社会学者。設計する「建築士」に芸術的要素を加えた「建築家」の成り立ちをブルデューのハビトゥスの枠組みから論じている。とてもユニークな内容。明治以降の建築家と建築の社会学的な近代史でもある。タイトルの通り芸術的な建築家はだいぶ前から解体されて絶滅危惧種。意匠から施工にお重みを置いた「街場の建築家」が生きる道ではないかという主張。意匠(デザイン)に憧れて建築学科を目指す高校生が読んでおいてほしい一冊。2023/01/20
ネムル
9
「建築家」の複雑なスタンス、あるいは震災以後特に強まったように思う「建築家」への違和感が、ブルデューの理論によって適格につかめるようになった。建築が華やかなりし時代のイメージがもう立ち行かない今、一部集中的に隈研吾が持て囃されるような、業界の先細りももっと突っ込んでほしかった気がするが。2022/06/21
takao
2
ふむ2022/12/08
ftoku
2
建築家とは何か。本書では建築家界というゲーム盤上で、建築作品などを掛け金として陣取り合戦のように卓越化する情念(エートス)を共有し内在させた人物として語られる。大学の建築教育では、技術以上にエートスを涵養する場として機能している。建築家界での卓越化戦略(※セルフブランディングと言い換えてもいい)の紹介として、安藤忠雄、隈研吾が紹介されていた。前著では黒川紀章。近年の事例として谷尻誠、山崎亮が紹介されているが、建築家界での卓越化の優先度の低さが象徴的であり、建築家像の解体と変容が想起される。2022/06/30
お抹茶
1
建築家を社会学で考察する本。こういうものの見方の本は初めて読んだ。少し例を挙げると,「建築家は資格や制度で界の境界が守られていないからこそ,建築家界は建築界外の人間をその内部に入れないようにする排他的な力学が働いている」とか,「建築家が長い時間をかけて培ってきたデザインセンスや審美眼や空間把握力といったものは資本として建築家界でのみ機能する」という指摘が社会学らしい見方。建築家への批判や建築教育への批判もおもしろい。2022/06/30