内容説明
それではソクラテスは何も欲しがらなかったのか?彼が欲しがっていたものは唯一つ、それが「知」だった。その営みこそが哲学。画期的図像解釈学。難解といわれる哲学の諸理論・諸思想を簡潔明瞭な筆致で、手際よく説明し記述している。
目次
第1章 ソクラテスの無知の知―道徳哲学のはじまり
第2章 ソクラテスの道徳的正義
第3章 プラトン的愛としての哲学
第4章 プラトンにおける善のイデア
第5章 プラトンにおける道徳と芸術
第6章 倫理学の確立―アリストテレス1
第7章 善と幸福―アリストテレス2
第8章 中庸の徳―アリストテレス3
第9章 近代的自我の発見―デカルト
第10章 幸福と善意志―カント1
第11章 道徳法則と定言命法―カント2
第12章 道徳性から人倫性へ―ヘーゲル
著者等紹介
門屋秀一[カドヤシュウイチ]
1967年愛媛県松山市生まれ。京都大学文学部哲学科卒業後、京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号(人間・環境学)取得。京都大学総合人間学部で日本学術振興会特別研究員PDとして研究に従事、ドイツ連邦共和国ベルリン・フンボルト大学に研究渡航。その後、美学研究所設立(所長)、立命館大学等、各社カルチャーセンターで講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐藤一臣
17
近代的自我のデカルトあたりから難しい話になってきました。アリストテレスまでは絵画と哲学との関係がふんふんそんなものかと読んでいて思いましたが、神話型の絵画は近代的自我になると幅越えしてしまっているのではないかと思います。当時の思想と近代以降の思想はちょっと相いれないところがあって絵画の解説には違和感が出てきました。わたしも哲学のことは知らないので甘いとは思いますが、絵画と近代的自我の強引な当てはめのような気が。とりあえず神っていう都合の良い物語を欲していた当時の人達の需要をとらえたのが神話型絵画なのかな。2017/07/10
bibliophage
4
題名に惹かれて手にとった1冊。西洋絵画メインで思想の部分の内容は軽いのかなぁと思って読み始めたが、内容もしっかりしていた。ソクラテス,プラトン,アリストテレスの章も面白かったが、カントの幸福と善意志は読みごたえがあり非常によかった。最後に書いてあった『美は「真」でもあった』というフレーズは、哲学と美術の関係を示唆していると思った。2015/06/29
おおかみ
4
プラトン、アリストテレス、カントら6人の哲学者の思想を、神話との関わりから読み解く。絵画は、神話の記述を明快にするために用いられる。いずれも厖大な知識に基づいて語られるが、綺麗に組み合わさっていて読み物としての完成度は高い。美を堪能しつつ、西洋思想の根底を知ることのできる良書。2010/03/21
鈴
0
ソクラテス・プラトン・アリストテレス・デカルト・カント・ヘーゲルという6人の偉大な哲学者の思想を神話やキリスト教と絡め、それらが描かれた絵画を解釈するという手法を用いて読み解いていく。話題は広く、それでいて飛躍もなく着実に進んでいく。決して読み流せるような本ではないが読みやすい。もっと評価されてもいいと思う。面白かった。2012/12/26