内容説明
紀元前後を跨いで生きた一将校が、知人の執政官就任を記念して著わしたローマ概略史。トロイア陥落から説き起こし、ティベリウス帝治下の後29年をもって擱筆される。ラテン文学の白銀期に特徴的な修辞法を多用しつつ、後輩の史家タキトゥスとは好対照な称讃的態度で、歴史的事実よりも人物の伝記のほうに関心が置かれている。
著者等紹介
西田卓生[ニシダタクオ]
1955年兵庫県生まれ。1978年京都大学工学部卒業。1986年京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了
高橋宏幸[タカハシヒロユキ]
1956年千葉県生まれ。1984年京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。2010年京都大学文学博士。現在、京都大学大学院文学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
8
著者の主観が混ざり歴史書として評価は低いという本書だが、H・ホワイトの暦(神の区切り中心の記述)、年代記(著者の回想的語りを含む)、歴史(市民的道徳観念で客観性を重視する記述)の区分で見ると、年代記的に捉えられるようだ。トロイア陥落からイエスを裁いたティベリウス治世までを人物で辿る本書は、自分を庇護する支配者を称賛する傾向がある。が、軍の上官ウィキニウスに本書を献呈した点にその理由が垣間見れそうだ。歴史の語り以前に戦いを記す著者が多くは軍人であり、軍のトップダウン体制を語りに反映させる段階があるのだろう。2022/07/19
刳森伸一
0
人物伝中心のローマ史。幾人かの例外を除いて非常に簡素な人物伝なので、熱中して読む感じではないですね。2012/11/03
たかみりん
0
トロイア戦争からティベリウスの時代までのローマ史概略を表した本。著者はティベリウスの同時代人でありいわば現場証人なわけだけども、当代に近づくにつれて記述は曖昧、そして権力者への過剰な賛辞が目立つ。自分への言及は、俺はこんなに凄い場面を見たんだぜっていう素朴な感想かと思うと微笑ましくはある。ちょっと引いた時代の著述の方が興味深く読めるかもしれない。とは言っても、やっぱり事実の羅列と言ってもいいくらい淡々としているので、万人に面白い読み物とは言いがたいかもしれないです。2012/04/09