内容説明
孔明や劉備の活躍する『三国志演義』はおもしろいが、小説であって事実ではない。学者が史実を正確に書くと少々むつかしいが、“事実は小説より奇なり”というとおり、小説よりはるかにおもしろい。これは第一級の歴史家の書いた歴史の本。
目次
1章 曹操の家と生い立ち
2章 曹操の仕官―初期の官僚生活
3章 曹操の挙兵―乱世の英雄への道
4章 官渡の戦いから赤壁の戦いへ
5章 魏公国・魏王国の建設―魏王朝への道
6章 曹操をとりまく人材
7章 建安文学の誕生
著者等紹介
堀敏一[ホリトシカズ]
1924年静岡県生まれ。東京大学文学部東洋史学科卒業。明治大学名誉教授
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
13
曹操の伝記。曹操陵墓発見前の著作のため、考古学的な視点は少ないが、文献史料を駆使して曹操の生涯を簡潔にまとめている。漢末の名士社会と人才主義をとる曹操の軋轢、そして曹操自身が行った登用法と後に制度化された九品官人法との違いが、個人的には興味深かった。著者も評すように、名士社会から貴族社会への「過渡期」の人物という印象が強い。2021/04/10
ピオリーヌ
8
曹操の弟に曹疾、曹徳がいたとは新鮮。毛玠はかなりの重要人物。曹操が兗州牧となったとき、天子を奉じること、財政的基盤を確立する必要がある事を述べている。改めて官渡の戦いは袁紹が勝つべき戦いだったというように感じる。よく曹操が勝ったもんだ。そして曹丕。曹操が亡くなったとき、その宮女をみな取って傍らにおいたエピソードは如何にも曹丕らしくて最高。2021/05/30
BIN
3
曹操の生涯について書かれているが、個人的には宗族の墓の記述は新鮮だった。その他曹操自身については本書にもあるとおり石井仁「曹操‐魏の武帝」の方がところどころ詳しいと思うが、地図とかがところどころにありわかりやすい。また、最後の方の曹操の人材収集癖や建安文学に関することが最も興味深いところであった。ただコストパフォーマンスが悪いのが非常に残念なところ。2011/04/05
佐藤丈宗
2
中国史の泰斗・堀敏一先生によるものなので、当然ながら史実がベース。史料を中心に据えつつも、伝承・伝説の類もスパイスのように盛り込まれているので、「真面目」な歴史書が陥りがちな無味乾燥さがない。実証や考証を主とするガチガチの専門書ではないので非常に読みやすい。これ一冊で曹操に関する基本的な事項は大体フォローできるので、三国志ビギナーにもオススメ。2016/12/31
でん
1
前々から興味のあった求賢令などの「人才主義」に関して、当時の名士のシステムなどと併せ非常に分かりやすく解説がなされていてとてもよかった2013/03/11