出版社内容情報
『群盗』の作者シラー(一七五九‐一八〇五)は,美学者としても多くのすぐれた論文を残しており,美学を学として確立したのはカントとシラーであるとさえ言われる.その彼が,美とは何かを明らかにすべく友人ケルナーに宛てて書き送ったこの一連の書簡には,「現象における自由」という彼の美学体系の根本思想が明快に展開されている.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
U
38
カントをよんだあとに。お手紙で口語文だったから、比較的よみ易かった。「自然はそれが芸術のように見えるとき美わしく、芸術はそれが自然のように見えるとき美わしい」シラーが、非常に含蓄があるとたたえたカントのことば。深い。確かにそうだと思う。他にも、自然は飛躍を好まない、とか、波状線となるのが美しい、とか。シラーの美に対する考え方に、新鮮な切り口を得た。2015/12/29
tieckP(ティークP)
5
文学者が語ったカント美学。『判断力批判』を真剣に学んだシラーがその内容を友人に紹介した手紙である。シラーの美学は哲学的な人々からは、語の定義が曖昧で筋が論理的でないと言われるけれど、小説読みとしては比喩が分かりやすく、語りが興味を優先して進められるので読みやすい。大学での授業もなかなか人気があったようだし、教育者としてのスキルはあったのではないかと思う。ちなみに内容は美と自由・自律と他律のお話。表現するもの(素材)による他律に支配されず、表現されるもの(形式)が自律的に見えるとき、それは美しい。2013/11/22
ybhkr
1
10年くらい前にカントの純粋理性批判を読み始め10ページくらいで挫折したのだが、この本は比較的読みやすく、薄いので、なんとか完読。1793年に書かれた手紙を昭和11年に日本語に訳し、昭和50年に再販。シラーの時代はシラーのような思想家にもパトロン(というか熱狂的ファン)がいて、病気や貧困に手を貸していたのね、とかいろいろ。シェイクスピアのハムレットの俳優は演技がうまいが、オフィーリアの女優はへた、ということをシラーの芸術における美学に従って言語化していて、なるほどなあ、と。1日14時間の読書かあ。2017/01/02
まるか
0
ISBNなし
よこづな
0
自らに従う「物」は自由であるように「見える。 」/自然に見える道徳と強制によるそれを区別することで、善と美を統一しようとしている。2009/02/08