感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tai
13
1/4程のボリュームだけど日本画、寺社や美術品の写真もありイメージが大分湧く。太平記は量感、叙事的、平家物語は質、芸術性の重さ、抒情が混入し香気ある古典に。また闘争の現象を超えた宗教的な世界へも心を寄せ作品の感動を複層的なものにしている。 源氏、平氏、英雄、勇士、虜囚、脱落者、女性、僧侶、くまなく話題にされ動乱の時代の相を全円的に描き出した。描かれるのは広く人間の問題、世の姿の問題として共感していくこと。滅びの哲理。歴史や宗教ではなく文学の眼。2021/03/07
SIGERU
4
懸案の日本古典を、抄訳ではあるが通して読了できた。さすが国民文学。雄勁な構想、流麗な名文、構えの大きさと品格とをすべて備えており、昂奮の読書体験だった。「平家物語」は作者不詳の口承文学で、13世紀鎌倉時代に書として成立した。平清盛を頂点として栄華を極めた平家の栄枯盛衰を、挿話の積み重ねによりその没落まで描き切っている。水上勉の現代語訳が端正で好み。さらに絵巻物画像などヴィジュアル面が充実し、年譜や解説など補助資料も潤沢で、大いに読解の援けとなった。2017/02/01