内容説明
本書は、「書は美術ならず」以来の書論を再検討し、甲骨文から前衛書までを読み解いて、言葉の書体としての書の表現を歴史的、構造的に解き明かす。
目次
序章 書はどのようなものと考えられて来たか
第1章 書は筆蝕の芸術である―書の美はどのような構造で成立するか
第2章 書は筆・墨・紙の芸術である―書の美の価値はなぜ生じるのか
第3章 書は言葉の芸術である―書は何を表現するのか
第4章 書は現在の芸術でありうるだろうか―書の再生について
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネムル
12
書道家の祖父が死んでからもう一年以上経つのな……と思いつつ、書について考えるによい本がわからず、眉に唾唾読んでみた。ワープロ不要論とかやたらええかっこしいな文体には鼻ほじだが、書を運動のなかで捉えるあたりは保坂和志あたりを思わせ興味深い。また、古代中国や近代日本における政治的力学との関連や、西洋美術の範疇で扱われることで筆触がタッチ・ストロークへと踏み外される点などに、書道の複雑な立ち位置がよく見える。にしても、相当に前衛をディスってるわりに自作があーなのは謎。筆触の素養のない上っ面の前衛がダメてことか?2017/11/21
umeko
12
書とは何か。書の芸術性とは。納得できる部分もあり、当然納得できない部分もある。かなり偏っている感じもする。しかし様々な問題提起が書に対しての視野を広げ、興味深く読んだ。書は奥深い。 2016/09/22
isfahan
8
「書」という芸術についての本。芸術論の内容が佐藤亜紀の絵画/小説論、保坂和志の音楽/小説論に重なる。つまり、作品は畢竟、運動の中にしかなく、作品の本質を味わうためにはその運動を鑑賞しなければいけないということ。ところで、前衛的な書に批判的と読める論旨からして、ご本人は伝統に根ざした書を書かれているのだろうなと思っていたが、画像検索してみるとさらに何倍もぶっとんだアバンギャルドな書で心の底から驚いた。筆蝕とはいったい…。2016/03/05
かもすぱ
3
この本を読んで、書を鑑賞する上で評価軸が豊かになったと思う。鑑賞の時は臨書の呼吸を意識するようになった。一方で作者の趣味でない戦後前衛書をかなりこき下ろしているので、話半分に読んでたところもある。あと、漢字の書体の成立の解説は素直に面白かった。草書→行書→楷書の順に成立して、楷書の書法が確立された段階で、草書にも楷書の書法が逆に応用されたので、唐の時代を境目に草書が変わったそうだ。2016/06/18
なかたにか
3
ソシュールをひたすら解っていない。昔の邦訳(言語学原論のあたり)の「書」は文字です。そのまま書道と読んだのでしょうか… 原論とある通り言語(言葉、記号、コトバ)を論じたもの。不勉強。後は、自分の作品はどうなの?と思ってしまう。批判は否定ではない。拒絶は批判ではない。批判は、一度認めて受け止めて、精査し、価値を見定める。自分の作品を養護するための書(道)論。結局明確な定義はあらわれない。ギリギリ筆蝕くらいかな?(筆触(タッチ)からきたものか?ならばあまりにフツーでは…)問題点が余りに多すぎる気がする。