出版社内容情報
ドイツ資本主義発展の落し子であるルール地方のポーランド人は,彼らにとっては「異郷」であるこの地で,どのような民族運動を展開したか.「民族運動」を軸に,プロイセン=ドイツの諸矛盾の具体相を抉り出し,近代ヨーロッパ像に修正を迫る問題作.
内容説明
「故郷」を離れ、「異郷」での生活を余儀なくされたポーランド人による民族運動は、さまざまな差別と抑圧に抗しながら、ドイツ帝国=国民国家、ドイツ社会とどのように対決したか?―それは、朝鮮民族への植民地的抑圧と「差別」という歴史的重荷を今もなお背負いつづけるわれわれの問題でもある!
目次
第1章 異郷と故郷
第2章 ポーランド人の結集と民族運動
第3章 ドイツ政治とポーランド民族運動
第4章 「ポーランドの脅威」と民族抑圧
第5章 ドイツ帝国主義とポーランド民族運動
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toska
6
ルール・ポーランド人の存在自体、今まで知らないままだった。ドイツ帝国の東端(ポーランド)から西端(ルール)に移住し、底辺労働者として否応なく国の工業化を支えた人々。民族と階級で二重化された過酷な差別。一方で、これを抑圧したドイツ人側は逆に「ポーランドの脅威」を感じていたという事実が注目される。著者も指摘している通り、近代日本は同様の帝国時代を(支配者として)くぐり抜けてきたわけで、彼らの歴史から学ぶべきことは少なくない。2023/01/18
印度 洋一郎
4
19世紀後半から20世紀初頭まで、ドイツ帝国に併合された東部の旧ポーランド領から西部の工業地帯ルールにやって来た、ルール・ポーランド人と呼ばれた人々と、ドイツ政府との軋轢の歴史を、自らの民族的アイデンティティを守ろうとしたポーランド語新聞やポーランド人団体などの変遷から追う。公的場所でのポーランド語を禁止しようとするドイツ政府の弾圧や、差別に耐えかねたポーランド人達のドイツ名への改姓など、日本人にも既視観のある風景が浮かぶ。同じ少数民族であるマズール人などのプロテスタント系スラブ民族の動きも興味深かった。2013/07/10
k_
3
ポーランドは抵抗のとき最も輝いていると思う。プロイセンは分割所有したポーランドをヴェストプロイセンと呼び、自らをオストプロイセンと称した。分割の中でプロイセンドイツはいかにドイツであろうとしたか、ポーランド人はいかにポーランドであろうとしたか。2011/03/24
ハヤブサの竜
0
新たに民族を吸収した国がどのように同化させるか、そしてどのように抵抗するか。日本人の学校教育ではまず教えてくれんな。この本は右にも左にもよってないから読みやすかった2014/03/15