出版社内容情報
《内容》 ■第10版のおもな改訂点（追加，変更）
１）老年性痴呆疾患では，わが国で発見された非アルツハイマー型痴呆の１つであるレビー小体型痴呆についての記載を加え，アルツハイマー型痴呆の前段階ともいうべき軽度知的障害mild cognitive impairment（MCI）についても加筆した。従来周辺症状と呼ばれてきた心理・行動面の症状が最近behavioral and psychological symptoms of dementia（BPSD）としてまとめて研究されているので，これについて簡単に触れた。老年期痴呆疾患のMRI・SPECT画像を一部追加し，診断学の章では健常者のMRI画像を提示した。
２）統合失調症の病態については，従来も神経発達障害仮説が提唱されているが，最近，MRIの三次元画像を統計学的手法で処理して病変部位を推定するstatistical parametric mapping（SPM）などの応用でこの仮説を支持する所見が報告されているので，それらを紹介した。
３）精神科薬物療法の領域では，新規抗精神病薬のうちに耐糖能異常，高血糖，糖尿病などを生じるものがあるので，注意を喚起した。SSRIの薬物相互作用の重要性にも触れた。わが国でもSSRI，SNRIなどを含めたうつ病の治療アルゴリズムが作成されたので紹介した。
４）睡眠障害については，視床下部ホルモンオレキシンの欠如がナルコレプシーの病因として重要であるとの新知見を紹介し，新しい頭痛国際分類2004についても加筆した。
５）そのほか，最近問題になっている引きこもりなどについても加筆した。また従来の国際障害分類ICIDHに代わって，より積極的な見方に基づく国際生活機能分類ICFが提唱されているので紹介した。医師国家試験出題基準の平成17年度版が新たに発表されているので，従来通り新基準から精神医学に関係が深いと思われる項目を抜粋して巻末に掲載した。
《目次》
■おもな内容
●総 論
精神医学序論精神医学の概念／精神医学における正常・異常と健康・病的状態（疾病）の問題／精神医学の対象領域／精神医学の方法／精神障害の成因と分類 医学心理学医学心理学の概念／医学心理学の領域／脳と精神現象－神経心理学／精神の発達と精神保健／人格／神経症性障害概論／心身症概論／精神病概論／病人の心理的危機／医師に必要な面接と精神療法の知識／高度情報技術社会のなかの精神科医療 精神症状学序論／個々の精神症状 精神医学的診断学精神医学における診断の手順／理化学的検査／心理検査
●各 論
症状性を含む器質性精神障害器質精神病，器質性精神障害／身体疾患に伴う精神障害（症状精神病）／てんかん／アルコール関連精神障害／精神作用物質使用による精神および行動障害（薬物依存）／薬物中毒／職業中毒，公害などに関連した化学物質による中毒精神病 神経症性障害・ストレス関連障害・身体表現性障害；人格・行動の障害神経症性障害総論／神経症性障害の類型（神経症性障害各論）／生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群／人格障害 統合失調症，妄想性障害と気分障害統合失調症／持続性妄想性障害／急性一過性精神病性障害／感応性妄想性障害／統合失調感情障害／非定型精神病／気分障害，感情障害，躁うつ病 児童・青年期精神医学概説／児童期および青年期の精神発達／児童・青年期の精神医学の特性／児童期および青年期にみられる精神障害
●精神医学と社会との関連
精神医学と社会との関連精神科患者の処遇／精神障害者処遇の法規／司法精神医学／社会と精神医学
●治療学
精神医学的治療学精神科治療の特色／精神科治療の発達／身体療法／精神療法／環境療法／精神科救急医療
●付 表
1－1.International Classification of Disease, Tenth Revion, Chapter V（F）, ICD-10 1－2.国際疾病分類（ICD-10）における気分［感情］障害の分類 2.DSM-IV分類 3.Mini-Mental State（MMS） 4.てんかん発作の国際分類（1981年） 5.てんかんおよびてんかん症候群の国際分類（1989年） 6.失語検査，失行・失認検査表 7.標準失語症検査の構成 8.Brief Psychiatric Rating Scale（BPRS） 9.HAMILTON DEPRESSION SCALE 10.精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 11.医師国家試験出題基準（平成17年度版）
