バベルの図書館
最後の宴の客

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  • サイズ A5判/ページ数 160p/高さ 23X13cm
  • 商品コード 9784336030498
  • NDC分類 953
  • Cコード C0397

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

228
「冷たいロマンティスト」という形容が、リラダンにはふさわしいだろう。ここには7篇の作品が収められているが、それらが持つムードはことごとく夜のそれである。明るい太陽の輝きよりは、クールに澄み渡った月の光だ。篇中では『希望』、『暗い話、…』、『ヴェラ』に、とりわけリラダンの特質がきわだつように思う。ボルヘスが「数ある短篇小説の中でも屈指の傑作」だという『希望』は、タイトルがなんともアイロニカルだ。『暗い話』からは19世紀の高踏派ともいうべきリラダンが窺えるし、『ヴェラ』には冷たくそして甘美な死の影が付き纏う。2013/04/06

内島菫

27
貴族的で鷹揚な残酷さに触れることができる短篇集。しかし、描かれる世界や雰囲気とは反対に、表現上での過剰や華美はない。そうしたいわば中身と器の間にある緊張感が、リラダンの作品を根底から支えているのではないだろうか。「希望」には、ポーの「落し穴と振子」と似た要素以上に、正反対の結末がもたらす効果が作品全体を支配している。つまり、拷問を受けながらもわずかな希望にしがみついている人物は、リラダンの場合は結局助からない。助かるポーの場合を大衆的とし、本作を貴族的と考えるとき、残酷さの様相が一変する。2018/08/25

藤月はな(灯れ松明の火)

20
SF映画「メトロポリス」の原作でもある「未来のイヴ」の作者の作品。序盤の「希望」での絶望への問いと救済の意味にガツンとやられ、「ツェ・イ・ラの冒険」の眩惑性と王の最後の言葉にクラクラし、「王妃イザボー」の本当に祈るべき相手の意味に愕然。「暗い話、語り手はなおも暗くて」は語り手を離れた可能性のある語りは別の人にとっては完成された物語にしか過ぎないということを示唆する。どの作品も最後の文章にやられてしまいます。参りましたm--m 2012/12/09

みつ

17
ボルヘス篇の『バベルの図書館」シリーズも29冊目まで辿り着いた。この巻の作者「ヴィリエ・ド・リラダン」は、昔の岩波文庫では「リイルアダン」と表記されていた。閑話休題。収録された短篇7作の多くは残酷なもの。個人的な犯罪の残虐さではなく、宗教的なものか前近代・近代かは問わず制度として許容された拷問・刑罰であるが故に、残酷さが際立つということがありそう。その意味では、『最後の宴の客』は1860年代の「近代」ヨーロッパの社交界が舞台に語られる点で一層恐ろしい。比して『ヴェラ』の思い出に生きる伯爵は、むしろ美しい。2022/08/07

em

15
芝居がかった気取り、虚飾と愚物を突き放す冷たさ、見え隠れするロマンティシズム。鼻持ちならないとも見えるものを強烈な磁力としてしまうのは、突出した創造者だけに許される特権。オスマン帝国ものを読んでいて気になっていたのですがやはりこの人、ロードス島から去ったマルタ騎士団長の末裔なんですね。家柄とプライドに見合わぬ極貧生活がこんな作品を生み出したのか。序文にある親友ワグナーとの逸話を読めば、この人が好きになってしまいます。巨匠との会話は楽しかったかと聞かれ、答えは「エトナ山と会話して楽しいものかね?」 2017/11/09

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