出版社内容情報
【全巻内容】1 ヘンリー六世第一部/2 ヘンリー六世第二部/3 ヘンリー六世第三部/4 リチャード三世/5 間違いの喜劇/6 タイタス・アンドロニカス/7 じゃじゃ馬ならし/8 ヴェローナの二紳士/9 恋の骨折り損/10 ロミオとジュリエット/11 リチャード二世/12 夏の夜の夢/13 ジョン王/14 ヴェニスの商人/15 ヘンリー四世第一部/16 ヘンリー四世第二部/17 から騒ぎ/18 ウィンザーの陽気な女房たち/19 ヘンリー五世/20 ジュリアス・シーザー/21 お気に召すまま/22 十二夜/23 ハムレット/24 トロイラスとクレシダ/25 終わりよければすべてよし/26 尺には尺を/27 オセロー/28 リア王/29 マクベス/30 アントニーとクレオパトラ/31 コリオレーナス/32 アテネのタイモン/33 ペリクリーズ/34 シンベリン/35 冬物語/36 テンペスト/37 ヘンリー八世
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
364
史劇だが、比較的自由に創作されているように思われる。実在のジョン王は波乱万丈の人生を歩んだのだが、このシェイクスピア劇でも起伏が多い。そのことはまた登場人物の多さと相まって、幾分か主題的統一を欠く結果にも繋がったようである。また、スペクタクルな要素も随所に見られ、(劇的統一を問わなければ)見どころもまた多いだろう。アーサーとヒューバートのやり取りのくだりなどは涙を誘うし、シェイクスピアにはこんな一面もあったのか思いを新たにする。また、ジョン王が戦場に皇太后(母親)を伴って行くのもなんだか微笑ましい。2022/03/17
ケイ
125
これまでは一番入り込めないシェイクスピア作品だったが、小栗旬君がフィリップを演じる舞台を2回観た上で再読すると、フィリップの心情が見えた気がした。争いはイングランドの王冠を巡るものであり、また英仏の領地が舞台になるが、フィリップだけはオーストリア公に対峙しており、獅子の毛皮を奪い返して自らそれ着ているのだ。彼の父、リチャード獅子心王を殺した男の首をとり、父のものだった獅子の毛皮を自ら着ることは、正式に王冠を要求はできなくともアイデンティティとなるものであったに違いない2023/02/12
まふ
101
歴代王の中でも人気の低いジョン王の物語。私生児フィリップ(後のサー・リチャード)が創作上の人物か実在かは認識できなかったが、最後までジョン王を助ける忠臣として活躍したのは良かった。王の甥アーサーと処刑人ヒューバートとのやり取りは涙をそそる。シェイクスピアも泣かせどころをきちんと作っていたわけである。にもかかわらず、アーサーを自殺に追い込むのはジョン王の愚かさを伝える物語の「流れ」としてやむを得なかったのだろう。「すっきりしない感」が残ったまま終り、なるほど人気が高くない理由がよくわかった。2023/12/15
ゆーかり
12
歴代王の中でも最も人気のないと言って良いジョン王だが、シェイクスピアの悪役としてはリチャード三世などと比べると印象が弱い。どちらかと言えば獅子心王リチャードの私生児フィリップやコンスタンスの方が存在感あり。アーサーがひどく幼く描かれているのは演出か?同じイングランド対フランスものでも『ヘンリー五世』ほど華々しくもなく。舞台で見ればまた印象も違うだろうか。2013/03/31
白義
10
シェイクスピア歴史劇上、時系列的に最古の時代が舞台。英国史上最も嫌われ者な王様、ジョン王を中心に当時の政治力学を劇的に描き、また王の中の孤独、時代全体が狂いつつあるような不条理さすら垣間見える一作。マイナーで一般には駄作とも言われているがそのストーリーの流れや構造はなんとなくリア王に似たようなところを思わせ、予想外に楽しめた。ジョン王の失墜と絶望と対照的に私生児が悪漢的、道化的なトリックスターからどんどん英雄にキャラが変わり、無垢なるアーサーと並んで強い印象を残してくれる2013/03/13