内容説明
ヨーロッパ文明の相対化にはじまり、ついにはその否定にまで至りついた、南に向かった画家たちの精神の軌跡。
目次
はじめに―絵画の民族学
1 ドラクロワのモロッコ、アルジェリア旅行
2 オリアンタリストたち
3 印象派の中の熱帯
4 ゴッホの「南方のアトリエ」
5 ゴーギャンの南方の思想
著者等紹介
岡谷公二[オカヤコウジ]
1929年生。東京大学文学部美学美術史学科卒業。跡見学園女子大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
329
最初にスポットを当てられるのはドラクロワである。私の浅薄な知識の範囲ではドラクロワと熱帯というのは、これまで全く交点を結んでいなかったのだが、本書によって大いに蒙を啓かれた次第。ドラクロワは34歳の1832年に約半年にわたってモロッコ、アルジェリアに滞在し、そのことは彼の絵画に大きく影響したようである。当時フランス画壇の主流をなしていた官展派(アングルら)は形態と描線を重視していたが、ドラクロワは色彩と光を捉える(印象派に先駆する)ことを主眼としていた。そうした中心に対する辺縁こそがやがては絵画の世界⇒ 2022/06/25
あかくま
13
『楽園のカンヴァス』から画家と熱帯というテーマに興味を持った。本書はドラクロワからゴーギャンまでの19世紀フランス絵画における、熱帯の扱われ方、その意味を解いていく試み。熱帯=ゴーギャンという式しか私には浮かばなかったが、穏やかで温帯的な印象派の中には、熱帯で生活し、熱帯を描いた画家たちが何人もおり、その光や色彩の経験が後々印象派としての画に生きてくると。エグゾティスムは、西欧中心主義への強烈なアンチテーゼだ。植民地政策と熱帯礼賛は不可分。絵を見る時に歴史を頭に入れておくことも時には大切だと思った。2014/03/30
netakiri nekotaro
1
「病い」としてのエグゾティスムを論じた『ピエル・ロティの館』の続編。エグゾティスムと民族学の関わり。文明の中の「野蛮人」としてのゴーギャンの意義。2013/08/13
ミンミン
1
ゴーギャンをはじめ、オリエンタルを愛した画家たちの軌跡。2012/10/27