出版社内容情報
切断された他人の手を奪うという虚構の事件を考えるなかで,ローマ以来の肉体と法の歴史をつぶさにたどり,臓器移植をめぐる生命倫理の議論に鋭い一石を投じる。
内容説明
生命科学の発達は、血液や臓器など「肉体の一部」が人体の外部で生きつづけることを可能にし、ローマ法で生まれ現在の西洋に受け継がれた、人間を非物質的なものとみなす観念を大きく揺さぶることになった。体から離れた部分はいったい何なのか、そして誰のものなのか。本書は、切断された他人の手を奪うというフィクションを考えるなかで、この観念の歴史的歩みを明らかにし、肉体をめぐる新しい法論理の道を追究する。
目次
判決―フィクション
体、この厄介なもの
終末…まえもって
ローマ的シヴィリテが法の非肉体化を求めるということ
人格、その演出家による創造物
体、有形な物―見いだせない明白な事実について
狂気とグロテスクに関する逸話
ゲルマン人には角が生えているのか
肉体の教会法的定義―権利の対象
肉体の教会法的定義―手当ての対象
公衆衛生の起源にさかのぼって
労働者の肉体という新しい法的事実
暴力がシヴィリテを脅かすところ
ある日、血が
血の事業
人間にとっての肉体、そして別の「物」
著者等紹介
ボー,ジャン=ピエール[ボー,ジャンピエール][Baud,Jean‐Pierre]
1943年アネシー生まれ。リール大学法学部で学び、法史学と私法学の学位(DES)取得。1971年、パリ第十大学(ナンテール)でP.ルジャンドル教授の指導のもと、法学博士号を取得。ストラスブール大学講師、同大学教授を経て、現在、パリ第十大学教授
野上博義[ノガミヒロヨシ]
1950年名古屋生まれ。京都大学に学ぶ。現在、名城大学法学部教授
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