内容説明
広島、長崎、ビキニ、そして福島。四度の国民的被爆/被ばくを被りながら、なぜ日本は、アメリカの「核の傘」を絶対視して核廃絶に踏み出すことなく、また核燃サイクルをはじめとする原子力神話に固執し続けるのか―。日米の膨大な公文書と関係者への取材を駆使して、核の軛につながれた同盟の実態を描く、息詰まるノンフィクション。
目次
第1章 フクシマとアメリカ―「3・11」が照射した核同盟の底流
第2章 「3・11」、もう一つの教訓―核テロチームを派遣した盟主の懸念
第3章 盟約の闇―外務官僚、安保改定半世紀の激白
第4章 呪縛の根底―「同盟管理政策」としての核密約
第5章 「プルトニウム大国」ニッポン―懸念を募らせる盟主
第6章 もう一つの神話―核燃サイクルと断ち切れぬ軛
著者等紹介
太田昌克[オオタマサカツ]
1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、政策研究大学院大学博士課程修了、博士(政策研究)。92年共同通信社入社後、広島支局、大阪社会部、高松支局、政治部、外信部、ワシントン支局を経て、現在は共同通信編集委員。1999~2000年米メリーランド大学にリサーチ・フェローとしてフルブライト留学。2006年度ボーン・上田記念国際記者賞、09年平和・協同ジャーナリスト基金賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Willie the Wildcat
68
日米の思惑と政官民の苦闘・困惑の歴史。1954年の予算計上で”水面”に浮上。1958年の非公式NCNDを経た『機密討論記録』の1960年が、もれなく”公式”な転機。密約関連文書破棄は、東郷元米局長のコメントが全てであり、「官の暴走/政の無能」也。大量の核のゴミとプルトニウムというツケを次世代に背負わせるのみならず、PDCAが機能せず”止める/立ち止まらない”のが致命的。”2018年問題”も無事(?)スルーし、税金の垂れ流しは継続。何事も時間切れで”なだれ込む”のが唯一の戦略?!破綻するのを待つだけなのか?2021/07/23
hatayan
52
被爆国であり深刻な原発事故を体験した日本がなぜ核廃絶や脱原発に後ろ向きなのかを検証。 冷戦でアメリカの庇護を受けた日本は核持ち込みを密約で担保。非核三原則と実態の間に矛盾を抱え、密約解明に動いた民主党政権にアメリカは露骨に不快感を示します。 巨費を投じた核燃料サイクルに対し原子力ムラでさえ意見が分かれるも、利害関係者のあまりに多い施策はもはや「やめられない止まらない」。経産省の若手官僚の告発文書「19兆円の請求書」は省内で握りつぶされます。政策の当事者の葛藤に踏み込み国策を見直すことの困難を示す一冊です。2020/06/03
壱萬弐仟縁
28
核ならしというマインドコントロール(17頁~)。原子力の平和利用と同様、洗脳の恐ろしさ。平和利用と軍事利用がコインの裏表の関係をなしている(19頁)。核爆発が引き起こす非人道的な側面から、核兵器が元来内包する人道上の問題、使用と威嚇の非合法性をめぐる国際的な議論が近年盛り上がっている(38頁)。外務省内に核密約に関するメモ書き的な紙が残され、歴代事務次官が継承してきた事実(67頁)は重い。非核三原則を余計なものと言い放った佐藤英作。2015/07/15
RED FOX
16
福島3.11に対するアメリカさんの初動対応の速さ、シビアさに驚いた。原子力発電政策の日本のガラパゴス化とアメリカさんの懸念の強まりにうなずいた。アメリカさんは原爆は落すし、でも原発は勧めるし、でもまた今プルトニウムの持ちすぎは嫌うし、突っ込みどころ満載である。2015/02/09
加藤久和
9
核問題のプロである著者の取材力の凄さを感じる。この本のテーマは大きく2つで、1960年安保改定の年に日米で交わされた「機密討論記録」いわゆる核密約の問題と核燃料サイクルの破綻によるプルトニウムの余剰在庫問題だ。私達日本人にとって目下切実なのはやはり消費できないプルトニウムの余剰在庫問題の方であろう。日本は2013年の時点で使用済み核燃料を再処理して抽出したプルトニウムを約45トン保有している。これは核爆弾約5000発が製造可能な量であるという。政府が原発の再稼働に躍起になる大きな理由がここにあるのである。2016/02/21