内容説明
豊かな森、そびえ立つアルプス、縦横に流れる川―その自然を抜きにドイツという国は語れません。なぜ魔女狩りやユダヤ人迫害が起きたのか?工業で栄えた理由や音楽が盛んな背景は?どうして名物がビール・ジャガイモ・ソーセージ?自然を切り口に歴史をたどれば、こうした謎が解けてきます。歴史や国民性の概観に最適!
目次
第1章 ゲルマンの森とその支配
第2章 山と川に拠る生活
第3章 宗教改革と自然の魔力
第4章 ハプスブルク帝国からドイツ帝国へ
第5章 産業発展と山の賜物
第6章 自然崇拝の明暗
第7章 経済大国からエコ大国へ
著者等紹介
池上俊一[イケガミシュンイチ]
1956年、愛知県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は西洋中世・ルネサンス史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
123
高校生用の本なのですが、私が読んでもかなりためになった気がします。ドイツを森と山と川の観点から歴史をたどっています。著者はイタリア史とフランス史を食べものの観点から同じシリーズで出されていますが、ドイツはビールとソーセージだけでは語れないと感じたのでしょう。やはり自然豊かな国だからだと思います。このような自然と気候が哲学や思索を生んだのでしょう。2016/05/04
sasara
21
ドイツ統一は小国乱立と宗教対立などで1871年明治4年と日本より遅れる。ライン川、ドナウ川、エルベ川とアルプスなどの山々と深い森はゲルマン的神秘な物語、哲学、音楽を育むも産業革命時には森林伐採により自然破壊後ナチ時代は意外にも自然保護エコを推進そして戦後は環境先進国のリーダーへ。なぜ民族主義的に一時期なったのかが少しだけわかったようないろんな角度から観る歴史はなかなかに面白い。2021/09/18
aisu
20
ドイツの歴史をこの一冊で通してまとめた感じ。森、山、川を通して、思想の根っこや、産業、文化に触れつつ。ドイツ統一は難問だった。2015発行なのでシリア難民受け入れまで書かれているが、ユーロ問題含めて今後はどうなるのか…2016/07/09
coolflat
17
12頁。オットー1世はしばしば国王に反抗的な態度をとる部族勢力を掣肘するべく教会と手を結ぶ事にして、司教たちを優遇し、世俗の権限と役職をも任せた。聖職者は独身だったので、相続を巡る争いを避けられるというメリットもあった。読み書きのできる聖職者は行政能力が高く、オットーは彼らを全国的に国王官僚化した。その上で、教会や修道院を王の財産・領地とみなした。この体制は「帝国教会政策」と名付けられた。ドイツの皇帝は血縁による世襲ではなく、「選挙」で決められるのが原則だった。これは王国の不安定要素として絶えずつきまとう2022/12/07
yoneyama
14
タイトルの通り、森林で生まれた思想、森林資産で栄え、滅ぼした歴史、川を使って産業が勃興し、ローマ帝国との境界や地域性も川を軸に述べられる。登山愛好家としては案外気が付かなかったアルプス登山黎明期18〜19世紀に英国人ばかりだったがその後ドイツ人がノーガイドで登り始めた話など(p129)。地政学というのだろうか。お国柄が天然地形の配置で決まる、人類が、ドイツが、その天然の恩恵と加工で発展してきたいきさつを読みたかったので満足です。ロマン主義もワンダーフォーゲル運動もナチズムも、この視点からの解説が面白いです2021/07/05