出版社内容情報
人間の「生」の深淵を見つめて書き続ける宮本輝による随筆集。異父兄との邂逅を描く「兄」、シルクロードへの旅にまつわる回想「星雲」など、著者が白秋のときを迎えて命を想う、珠玉の14篇。
内容説明
今まで語られることの無かった異父兄との邂逅を描く「兄」。シルクロードへの旅の回想「星雲」。小説『優駿』執筆当時の馬主経験を生かした「殺し馬券」。ある老人の死に黙考する「消滅せず」など、人間への変わらぬ信頼を込めた随筆集。
目次
兄
星雲
ガラスの向こう
風の渦
殺し馬券
小説の登場人物たち
書物の思い出
パニック障害がもたらしたもの
世界、時間、距離
人々のつながり
田園の光
消滅せず
土佐堀川からドナウ河へ その一
土佐堀川からドナウ河へ その二
著者等紹介
宮本輝[ミヤモトテル]
1947年、兵庫県神戸市生まれ。広告代理店勤務を経て、執筆活動へ。1977年「泥の河」で太宰治賞を、翌年「螢川」で芥川賞を受賞。著作に『優駿』(吉川英治文学賞)『約束の冬』(芸術選奨文部科学大臣賞文学部門)『骸骨ビルの庭』(司馬遼太郎賞)など。2010年秋、紫綬褒章受章。1996年より、芥川賞選考委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
めろんラブ
90
大作家さんだし、なんとなく敷居が高そうだし・・・と気後れし、宮本作品には手を出せずにいました。こちらはエッセイ集とのことで、宮本初心者として気軽に挑戦。幼少期の体験や幾つかの病の経験、旅の記憶など、当初はとりとめのないラインアップのように思えましたが、読後浮かび上がってくるのは、タイトルとなった”いのちの姿”。様々な命にまつわるあれこれが、美しい旋律を帯びて記されていました。また、収録されている14篇、いずれも短篇小説のような味わいがあり、深い余韻に浸れる一冊です。2015/11/30
どどいち
73
いろんな経験をしてその苦難の壁を乗り越えた話は感銘を受けた。また、次にどの様な行動・考えを持って直ぐに切り替えられる生き方には納得…。色んな苦労を重ねる事でその人の器も広く・深くなるんでしょう…。2016/01/20
ゆみねこ
70
大好きな作品の誕生秘話や、病に苦しんだ日々のこと、作家となる決意をしたきっかけ等々短い文章ですが読み応えがありました。「水のかたち」の中のサイドストーリー的な北朝鮮からの引き上げ話も、宮本さんの苦闘時代の知人からのものだったと。これからもどんどん心ふるわせる作品をお待ちしています!2016/01/01
くろにゃんこ
55
これまでの人生で見た、出会ったいくつもの『いのちの姿』が静かに語られるエッセイ。薄い本ながらたくさんの時代、様々な地域での話を堪能できました。2015/02/18
じいじ
54
人間のいのち、生命、生きることについて、宮本輝が名文で綴ったエッセイ集。あ~そうなんだ、え~知らなかった・等面白い話が満載。サラリーマンを辞めて、小説家になるキッカケは、本屋店頭で立ち読みした、或る文芸誌の短篇小説だった。「これなら俺でも書ける・・」と思う。「小説は言葉では説明できないものを言葉によって織り上げていくものである。」このとき悟った。そして書上げたのが「蛍川」と「泥の河」(芥川賞)。ヒット作「錦繍」や「水のかたち」のエピソードやその時の背景が興味深い。宮本輝の素顔が分かる面白いエッセイです。2015/02/24