内容説明
顰蹙を買う反逆の徒が、なぜ「男の理想」となったのか?華麗な装い、大胆な立ち居振る舞い、事に臨む態度で、氏素性に関係なく周囲をひれ伏させる男がいた。「ナポレオン(英雄)になるよりも、ブランメル(ダンディの祖)になりたい」と詩人バイロンにいわしめた、絶対的な魅力の正体とは?時代ごとのカリスマ、理想の男たちのまばゆい系譜と「愛され力」を、気鋭のファッションジャーナリストが徹底解剖する。
目次
第1部 ダンディズム誕生前夜(ジェントルマン、その源流と残滓)
第2部 ダンディズム列伝―その栄枯盛衰(ダンディズムは進化する;ダンディズムの祖にして絶対神、ボー・ブランメル;ブラックフォーマルを創造したダンディ、リットン卿;ハンディをダンディズムで押しのけた文人宰相、ディズレイリ ほか)
第3部 現代のダンディズム像(ダンディズムの再定義;二十一世紀のダンディ;混迷する現代において、変わりゆく男性像;日本におけるダンディズム)
著者等紹介
中野香織[ナカノカオリ]
1962年生まれ。東京大学文学部および教養学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得。英国ケンブリッジ大学客員研究員などを経て、文筆業に。新聞、雑誌、ウェブマガジンなど多媒体において連載記事を執筆。2008年より明治大学国際日本学部特任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Inzaghico
9
著者は第2部、第3部でダンディたちを挙げていくが、これが見事にほぼイギリス人。たまにフランス人がいるが、イギリス人だとジェイムズ・ボンドまで入れている。著者は具体的には示していないが、共通するのは知性と教養ではないか。知っていて、あえて外す、知っていて、あえて世間と逆を行く、というのは、知らなければできない。 それにしても、ダンディとして取り上げられたエドワード7世と8世の漁色家ぶりに驚いた。そしてエドワード8世と結婚したシンプソン夫人のしたたかさに舌を巻いた。2022/01/31
noémi
3
女性ながら筆者の男前な文章がさわやか。ダンディズムはなにか?とはそもそも愚問であって、「これこれこうである」と定義する、いわゆる教条主義と正反対なものであるそうな。ダンディには世間の同調圧力に負けない、反骨の精神が必要らしい。ダンディの開祖のボー・ブランメルは有名だが、フランス人のドルセイの存在は知らなかった。同じダンディでもドルセイはブランメルの趣味や行動とは真逆であるのは面白い。さりげなさを装うことがダンディズムの真髄なのだが、努力のあまりわざとらしくなるというパラドックスに陥るのが曲者である。2011/08/28
ルンブマ
2
ダンディズムとは何か。最初から完璧に何もかも揃っていて、ひねりもなくスマートに王道をいく男を、本来のダンディとは呼ばない。著者によれば、世間からマイナス視されるような価値を、殊更大声で論じ立てることなく、プラスに転じて見せるような皮肉なひねり・複雑さがそこには必要であるという。では真なるダンディズムとは何か。著者はそれを、「時代の趨勢に流されず、孤独に抵抗し続け、破滅も辞さぬ、愚かしい男」、2021/09/13
ハヤカワショボ夫
1
今まで読んできた中野氏の本でダンディズムが体系づけられ纏められた本。先ずジェントルマンが基礎で自己愛から発生する快楽主義とします。時代によって揺れ動くジェントルマンの定義を相対的にダンディズムとし、それは社会と対峙する「個」の中に存在します。ダンディズムを表現してきた男たちの歴史を過去~現代に紹介し、更にこれからそして日本のダンディズムについて検証しています。屈折と矛盾を内包し見栄っ張りで、抵抗する「個」であることと分かりました。グローバル化や横並びの日本にあってこんな人は中々珍しいですね。【家】★★★★2016/01/21
小倉あずき
1
『スーツの神話』から一気読み。若輩の私が言うのもなんだが、ダンディズムに青春を捧げた中野さんの豊穣を見た気がする2013/11/12