出版社内容情報
植民者二世である少女たちの生活と意識をたどり、支配構造における役割を分析。戦後における、内なる植民地主義との葛藤や克服過程をたどる。アンケート、インタビュー、同窓会誌など多数の史料から、その経験を重層的に描く。
内容説明
植民者二世の少女たちの目に植民地はどのように映っていたのか。敗戦~引揚げ後を生きるなかで、内面化した植民地主義をどのように自覚し、克服していくのか。アンケート・インタビュー・同窓会誌などの生の声から読み解く。
目次
序 問題意識と方法
第1章 朝鮮での暮らし
第2章 植民地女学校―京城第一公立高等女学校の沿革
第3章 少女たちにとっての京城第一公立高等女学校
第4章 朝鮮認識・植民地認識―植民地主義はいかに内面化されるか
第5章 敗戦が始まりだった―認識の転換を促すもの(1)
第6章 引揚げ―認識の転換を促すもの(2)
第7章 継続する植民地経験―植民者であったことを反芻しながら
著者等紹介
広瀬玲子[ヒロセレイコ]
北海道情報大学情報メディア学部教授。近代日本思想史・女性史専攻、博士(文学)。1951年新潟県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みなみ
14
親が朝鮮半島に移住してきて、京城第一公立高等女学校に通う生徒に、戦後インタビューを試みた一冊。当たり前のように日本人が朝鮮半島で豊かに暮らし、韓国人は日本人の下働きか、あるいは住むところから別で接触せず。日本は朝鮮半島を植民地化していたので、日本の敗戦後は韓国の人たちの態度が大きく変わり、親の移住で日本と植民地の意識もなく生活していた彼女たちはショックを受ける。朝鮮半島側からすれば植民地支配の圧政からから解放されたのだが、支配していた側の一般市民が敗戦で被害者意識めいた感情を持つのがなんとも言えない。2022/04/08
山ろく
4
植民地朝鮮に生まれ、京城(現在のソウル)第一高等女学校に通い、敗戦まで住んでいた女性たち16人へのインタビューによるオーラルヒストリー。「韓国併合は犯罪だった」「いや日本はいいこともした」。そんな議論の前に、70万の日本人が隣国を占領することの意味を考える足場を、くらしや学校、そして戦争の細々としたエピソードが与えてくれる。懐かしく振り返る人も、今になって痛みと申し訳なさを葛藤として抱く人も皆、肉体労働は朝鮮人の仕事で朝鮮人が日本語を話すのは仕方ないことで神社に参拝してここも日本と信じて疑わなかった青春。2019/12/14
ミネチュ
3
朝鮮の京城(現在の韓国ソウル)にあった京城第一公立高等女学校の卒業生へのインタビューやアンケートを通して、彼女らの京城での暮らしや当時の朝鮮人への認識、敗戦後の引き揚げ、戦後の植民地朝鮮への考えなどをまとめた本。 興味深いのは、「内地に行ったら、それこそ電車の運転手さんから何から何まで皆、日本人…中略…向こうで、そういう仕事というのは朝鮮の人がやることだから」びっくりしたという話。日本では労働者が日本語を話していることに驚いた人もいます。朝鮮に肉体労働する日本人なんていなかったんですね。2021/10/17
紙虫
3
占領下の朝鮮の高等女学校を卒業した女性たちへのインタビューをまとめて、植民側の意識をあぶりだした記録。オーラルヒストリーというらしい。2020/06/12
CBF
1
(★☆☆☆☆) 植民者二世の少女たちの目に植民地はどのように映っていたのか。敗戦〜引揚げ後を生きるなかで、内面化した植民地主義をどのように自覚し、克服していくのか。アンケート・インタビュー・同窓会誌などの生の声から読み解くー。 『使用人を固有名詞で呼ぶことはほとんどなく、既婚女性をオモニ、未婚女性をキチべと呼んでいた。なかには「はなちゃん」、「ハナヤン」などと日本ふうの呼称をつけていた家もあった。このことは、雇い手が朝鮮人使用人を一個の人格と認めていなかったことを物語る。』2019/12/21