内容説明
塚本邦雄。前衛短歌運動の輝ける旗手として、詩歌の可能性を飛躍的に拡大し、戦後日本で「短歌には何ができるか」を鋭く問いかけた。その苦闘の成果は、世界的な混迷を深める二十一世紀で、「芸術と人間は何をなすべきか」を見いだすための手がかりとなる。「前衛=難解」という従来のイメージを払拭し、塚本が追い求めた「短歌」の生命力に肉迫する。そのために、五十のキーワードに基づく秀歌五十首を選び、塚本ワールドへの入口とした。また、それぞれの歌を多角的に理解するために、本文では歌の鑑賞を行い、脚注では歌の背景を詳しく解説した。一首の歌を本文と脚注とで「二度味わう」ことで、塚本短歌の発生と影響力が、あますところなく解明される。
目次
初戀の木陰うつろふねがはくは死より眞青にいのちきらめけ
錐・蠍・旱・雁・掏摸・檻・囮・森・橇・二人・鎖・百合・塵
サッカーの制〓(た)迦童子火のにほひ矜羯羅童子雪のかをりよ
詩歌變ともいふべき豫感夜の秋の水中に水奔るを視たり
革命歌作詞家に凭りかかられてすこしづつ液化してゆくピアノ
薫製卵はるけき火事の香にみちて母がわれ生みたること恕す
死に死に死に死にてをはりの明るまむ青鱚の胎てのひらに透く
われがもつとも惡むものわれ、鹽壺の匙があぢさゐ色に腐れる
殺戮の果てし野にとり遺されしオルガンがひとり奏でる雅歌を
聖母像ばかりならべてある美術館の出口につづく火藥庫〔ほか〕
著者等紹介
島内景二[シマウチケイジ]
1955年長崎県生。東京大学文学部卒業、東京大学大学院修了。博士(文学)。現在、電気通信大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
新地学@児童書病発動中
kaizen@名古屋de朝活読書会
夜間飛行
燃えつきた棒