内容説明
稀代の作曲家は音楽だけでなく、出色の著作も数多く遺した。その中から62篇を厳選し、一冊にまとめた文庫オリジナル編集版。名曲『ノヴェンバー・ステップス』誕生秘話などの自作品の解説や、彼が愛した音楽・映画の評論、日々の随想、そして自作の小説等々、武満の関心の幅広さが窺われる。また音楽や人間を慈しむ彼の姿が、つづられた数々の言葉から垣間見られる。巻末に、現在の武満作品琵琶奏者である中村鶴城と編者との対談を収録。実演する立場から武満音楽の真髄を紹介する。
目次
音楽、土地と方位
音楽、個と普遍
音と言葉と
日常から
映画/音楽
フィクションの
著者等紹介
武満徹[タケミツトオル]
1930年、東京生まれ。清瀬保二に作曲を師事。1951年、湯浅譲二や秋山邦晴らと芸術グループ実験工房を結成。1957年、東京交響楽団の委嘱で「弦楽のためのレクイエム」を作曲。以後「地平線のドーリア」「ノヴェンバー・ステップス」など数々の名曲を発表。1996年逝去
小沼純一[コヌマジュンイチ]
1959年、東京生まれ。早稲田大学文学学術院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
26
本書で語られる「グルート島」のgrooteという言葉は、オランダ語由来だという。つまり、ミステリファンにおなじみの、クロフツの「フローテ公園の殺人」の公園の名前と同じ。その英語読みというわけである。これで「フローテ公園」が「大きい公園」の意味であると、初めて知った。さて武満さんは、この本で「ノヴェンバー・ステップス」という作品を中心に、東西の音の差異と、自分の音楽とのかかわりを語るわけであるが、申し訳ないことに、その作品を聴いたことがない。本日読了したので、YouTubeから音源を探してみようと思った。2015/03/04
アムリタ
11
思索する音楽家、武満徹。難解でしかないと思っていた彼の音作りの秘密がここにある。哲学する音楽家、武満は音を通して考える。彼の音は思想だ。川のように滔々とながれゆくいのちのしらべに彼は耳を澄ます。 世界にすでに書かれ、うたわれ、描かれたものたちの歌や呟きに、耳を傾けるためにできることは何か。それは沈黙することである。2020/02/05
うた
5
感想が書きにくい本である。分類するなら、ドビュッシーやラヴェル、サティのそれなのだけれど、自分なりに取り込んで書き直すのがむずかしい。漫画的な芸術家像が気持ち悪いほどウケる今、これだけ考えて音楽に取り組んだ人がいたということを思い出させてくれる。2014/09/19
ルンブマ
3
中途半端ではなく、超・究極的に自体愛的享楽行為を貫くとき、本人は他者を意識していなくても、なぜか他者を惹きつけてしまう、ということはありうるだろうか。これは「ありうる」。究極的な自体愛的享楽行為は、私的言語として立ち現れてくるため、それは他者にとってはある種の「謎」として受け取られる。その謎は、何かを意味する/言わんとするもののようであるため、(不可能ではあるが)その謎を解こうとする戯れへと、他者は誘い込まれることとなる。2021/02/03
吟遊
3
同じ内容をくり返してもいい…という編者の方針が少しユニーク。同じテーマについて、ちょっとずつ異なる語りがみられる。重複、と思う向きもあるかもしれないが。武満徹さんはエッセイストとしても、思想家としても、とても素敵な方だ。2015/05/28