出版社内容情報
スターリンのテロルを生き延びた、数百家族の手紙、日記、文書、写真とインタビューにより、封印された「肉声」が甦る。胸を打つ「オーラル・ヒストリー」の決定版。沼野恭子氏推薦!
内容説明
無表情な統計の数字の裏にひそむ罪なき人々の悲劇的な運命とほんの一握りの奇跡。著者は、スターリン体制のもとで人間らしく生きようとした人たちの内面に寄り添い、魂を揺さぶられる無数のドラマをあぶりだした。テロルに翻弄された、多数の家族の回想、手紙、写真を収録。オーラル・ヒストリーの金字塔。
目次
序章
第1章 革命の世代―一九一七~二八年
第2章 大いなる転換―一九二八~三二年
第3章 幸福を求めて―一九三二~三六年
第4章 大いなる恐怖―一九三七~三八年
著者等紹介
ファイジズ,オーランドー[ファイジズ,オーランドー][Figes,Orlando]
1959年生まれ。ロンドン大学バークベック・カレッジの歴史学主任教授(ロシア史専攻)。ロシアとソ連の歴史に関する大作を次々に発表
染谷徹[ソメヤトオル]
1940年生。東京外国語大学ロシア語科卒。ロシア政治史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
69
スターリン主義の人々の価値観と人間関係への影響を、犠牲者の大多数を占める「平凡な人々」の声から見てゆく本。多様な地域の多様な立場の人々の日記や回顧録などを繙くことで彼らの内面世界が示されます。それは階級闘争のプロパガンダがいかに人々を分断したか、イデオロギー的教化や密告の恐怖がいかに家族の絆を打ち砕いたか、その体制と人々がいかに妥協したかの物語で、党が提示する「革命的真実」と現実の間を生きる人々のドラマに心乱されずにはいられません。体制とプロパガンダの教化や圧力から自立することの難しさを思いながら下巻へ。2022/05/24
BLACK無糖好き
2
ぶ厚い!重い!500ページの内容に時間が経つのも忘れ圧倒される。スターリン独裁時代、ソ連の一般家族がどのように暮らしていたかを、様々な事例を元に生々しく描かれている。ある日突然「人民の敵」として逮捕され、家族も引き裂かれ、拷問を伴う尋問が繰り返される。常に密告の恐怖に怯えながら囁き声での生活を強いられる、まさに暗黒の社会である。一方で、1920年代のボリシェビキの質実剛健で禁欲主義的な生活を通して、高貴な精神生活を確立しようとする思想には個人的にも共感出来る部分もあり、応用する価値があると感じた。2014/12/27
和泉花
1
膨大な量で、内容が濃い。こんなに自国民を痛めつけるなんて……2022/04/11
かじ
1
久しぶりに、全然読み進められない本だった……思った以上に時間がかかってしまった。スターリン主義全盛期のソ連で市井の人々がどう生きてきたか、資料や聞き取りなどの調査で判明したと思われる事実を、著者の主観を一切交えず淡々と綴っているだけだが、とにかく内容が濃い。人間は、強いられたものであってもその環境に適応することができてしまう。そしてそのために、人間的な感情を殺さずにいられなくなる場合がある。そんな社会の恐ろしさ。闘う人々を襲う苛酷な現実。最後のエピソードは、最後に持ってこられただけに衝撃的だった。2014/04/01
あらい/にったのひと
0
傑作。量もそうだが中身も大変によい。序盤はそうでもないが、やはり話題が大粛清になるに連れて暗さが増す。ディストピアものが好きな方は必読。2017/01/15