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不健康は悪なのか―健康をモラル化する世界

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  • サイズ A5判/ページ数 250,/高さ 22cm
  • 商品コード 9784622078944
  • NDC分類 498
  • Cコード C0036

出版社内容情報

「健康」概念を構成するイデオロギーとは? 医療人類学、生命倫理学、フェミニズム研究など、多面的な視点で「健康」の虚像に迫る。

なぜ私たちは、健康でなくてはいけないのだろうか? メディアによって作られる美意識、公共広告によって喧伝される道徳――今日の「健康」という概念には、医学的問題を超えたイデオロギーが含まれている。本書は医療人類学、生命倫理学、文化人類学、フェミニズム研究、文献学、障害学、法学など、多様な立場の著者たちが多面的な切り口で「健康とは何か」を解き明かす挑戦的な一書である。

第1章 イントロダクション――なぜ健康に異議を唱えるのか?(ジョナサン・M・メッツル)
第?T部 ところで、健康とは何なのだろう? 第2章 健康とは何なのだろう? そして、どうしたら健康になれるのだろう?(リチャード・クライン)第3章 肉体の肥大に伴う危険性――肥満、摂食、そして、「健康」の曖昧さをめぐって(ローレン・バーラント)/第4章 グローバル・ヘルスへの異議?――健康を通して、科学、非科学、そしてナンセンスを調停すること(ヴィンカンヌ・アダムス)
第?U部 道徳から見た健康 第5章 遺伝子時代、健康をめぐっての社会的不道徳――人種、障害、不平等(ドロシー・ロバーツ)/第6章 肥満パニック、そして新しき道徳(キャスリーン・ルベスコ)/第7章 (ときには)おっぱいに育児に異議を唱える(ジョアン・B・ウルフ)
第?V部 健康と疾患を造り出すこと 第8章 製薬業界のプロパガンダ(カール・エリオット)/第9章 受動‐攻撃性パーソナリテイ障害の奇妙にも受動‐攻撃的な歴史(クリストファー・レーン)/第10章 強迫性障害の氾濫――精神医療への異議(レナード・J・ディビス)/第11章 原子力への異常な愛情――あるいはいかにして原子力爆弾は死に関するアメリカ人の考え方を変えたのか(ジョセフ・マスコ)
第?W部 健康になった後の快楽と苦痛 第12章 健康のためにはどれくらいセックスしなければならないのか?――無性愛という悦び(ユンジュン・キム)/第13章 備えよ――サバイバーシップは癌患者の義務なのか?(S・ロッホラン・ジェイン)/第14章 苦痛の名のもとに(トビン・シーバース)/第15章 結語――来たるべき健康とは?(アンナ・カークランド)

内容説明

私たちは、なぜ健康でなくてはならないのだろうか?今日、新たな規範やイデオロギーによって「健康」という言葉が示すものは変容しつつある。15篇を収録。多彩なトピック、多面的な視点からモラル化する「健康」を批判的に考察し、「健康」のあるべき姿を思索する。

目次

イントロダクション―なぜ健康に異議を唱えるのか?
第1部 ところで、健康とは何だろう?(健康とは何なのだろう?そして、どうしたら健康になれるのだろう?;肉体の肥大に伴う危険性―肥満、食事、そして「健康」のあいまいさをめぐって;グローバルヘルスへの異義?―健康を通して、科学、非科学、そしてナンセンスを調停すること)
第2部 道徳から見た健康(遺伝子時代、健康をめぐっての社会的不道徳―人種、障害、不平等;肥満パニック、そして新しき道徳;(ときには)おpっぱいの育児に異議を唱える)
第3部 健康と疾患を造り出すこと(製薬業界のプロパガンダ;受動‐攻撃性パーソナリティ障害の奇妙に受動‐攻撃的な歴史;強迫性障害の氾濫―精神医療への異議;原子力への異常な愛情―あるいはいかにして原子爆弾は死に関するアメリカ人の考え方を変えたのか)
第4部 健康になった後の快楽と苦痛(セックスは健康のために必要か?―無性愛という悦び;備えよ―サバイバーシップは癌患者の義務なのか?;苦痛の名のもとに)
結語―来たるべき健康とは?

著者等紹介

細澤仁[ホソザワジン]
1963年生まれ。精神科医。臨床心理士。1988年京都大学文学部卒、1995年神戸大学医学部卒。神戸大学大学院医学系研究科助手、兵庫教育大学大学院学校教育研究科教授などを経て、現在、アイリス心理相談室、フェルマータ・メンタルクリニック

大塚紳一郎[オオツカシンイチロウ]
1980年生まれ。臨床心理士。2002年慶應義塾大学文学部卒。2009年甲南大学大学院人文科学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、菊川荒木内科心療内科、東洋大学附属姫路中学校・高等学校スクールカウンセラー、大塚心理療法プラクシス

増尾徳行[マスオノリユキ]
1968年生まれ。臨床心理士。1993年京都大学法学部卒。2003年関西大学大学院社会学研究科博士課程前期課程修了。公益財団法人復光会垂水病院、神戸松蔭こころのケア・センターなどを経て、現在、兵庫県立光風病院、上本町心理臨床オフィス

宮畑麻衣[ミヤハタマイ]
1987年生まれ。臨床心理士。2011年大阪市立大学生活科学部卒。2013年大阪市立大学大学院生活科学研究科前期博士課程修了。現在、兵庫県立光風病院(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

74
健康をめぐって書かれた論文集。自分なりの健康観やヘルスリテラシーを高めるために読んだ。健康は、異常と正常と同じくらいにあいまいな概念である。血液検査やBMIの値に一喜一憂し、もっと痩せなければと減量に励み、はたから見ると「健康を善とするイデオロギー」に身を捧げているとしか思えないほど、ストイックな日常生活が送っている者がいる。それはそれで、本人が満足しているのであれば、苦痛が快楽になる場合もあるので、何も否定するものではない。いずれにしても幸運に恵まれ長生きできたとしても、やがて加齢と障害は皆にやってくる2016/11/06

どら猫さとっち

9
アメリカで起こっている健康のモラル化の実像とその疑問を呈示した一冊。なぜそこまで健康でいなくてはならないのか。メディアが煽る健康から、そこで起こりうる副作用まで、健康をめぐってズレや不可解な問題をあぶり出していく。これはアメリカの話だが、日本でもすでにそのような現象が起きているようだ。誰もが健康でありたいのは当然だが、行き過ぎた健康には懐疑的だ。不健康でも寛容できる社会は、ないのだろうか。2017/03/20

mawaji

8
医療人類学者磯野真穂さんの推薦図書。医療者からしてみれば生命や健康が最優先事項という頭があるかと思いますが、昨今の新型コロナウイルス感染症への政策に対する国際政治学者らの反応を見てみると「健康に異議を唱える」視点もありうるのかもしれないことだなあ、とけっこう目からウロコという感じでした。疾患啓発キャンペーンと製薬業界のプロパガンダ、時代とともに疾患の概念や構成が変化し「秘かな流行病」となった強迫性障害の章などが特に興味深く思いました。「一見正しく思える概念でも、その意味について自分の頭で考えることが大切」2020/06/27

himawari

7
あの健康常識は本当に私たちの健康を守ってくれるものだろうか、そもそも健康とは何だろう。題名から、健康である事を無条件で受け入れてしまう人を皮肉った本かと思ったが、そうではなかった。薬を売り出すために病気の名前を宣伝する製薬会社、非倫理的で不明瞭な精神疾患マニュアルという非科学的な診断基準、資本主義社会のために作り出された健康モラルなど、健康に関わる様々な視点で真面目に考察している。当たり前だと思っていた事が実はそうではないと知ったときに世界は広がる。知識を得る面白さを感じられる一冊でした。2016/06/21

rune

3
原題はAgainst Health: How Health Became the New Morality。健康であることは望ましい。これは確かだ。しかし、健康ビジネスが巨大化し、健康であるべきだというメッセージがメディアを通じて執拗に発信される今日、健康であることは個人に対する道徳的要請となっている。本書では、肥満、無性愛、粉ミルクによる育児等が不健康なもの=悪しきものとされている現状が批判的に考察される。また、医学界、製薬業界、広告業界によって新たな病が作り出されていく様が描かれる。2022/12/03

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