内容説明
信玄・元就のイメージは、大きく変わるかもしれない。武田信玄と毛利元就は、いうまでもなく、東日本・西日本を代表する戦国武将である。すでに数多くの研究が行われてきた。しかし、彼らのイメージは、まだ固まっていないというべきである。発見されるべき事実や、訂正されるべき通説は、意外にたくさん残っている。最新の研究が正しいとも限らない。冷静な目で信玄・元就の実像を見直したい。
目次
発見の余地、訂正の余地
1 信玄と元就、その生涯、風貌、筆跡
2 当主の地位に就く
3 名将の条件とは
4 広がる勢力圏
5 金山と銀山、港湾と海運
6 将軍との接し方
7 家臣を従える
8 家を伝える
著者等紹介
鴨川達夫[カモガワタツオ]
1962年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。専攻、日本中世史(戦国時代)。現在、東京大学史料編纂所准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜勤中の寺
33
再読。武田信玄はどうでもよく、偏に毛利元就への関心のみで読む。元就は国人一揆の盟主という存在であったので、他国の戦国大名に比べ権利者としては不安定な存在だと言う人がいるが、決してそんな事はなかったと指摘している。まあそうだよね。「通説への疑惑」に対して懐疑的であるのも良い。信玄が金山から莫大な収入を得ていたのは嘘で、元就が銀山から収入を得ていたのは本当だが、その銀をどういう、ルートで武器や食糧に換えていたのかは不明というのも面白い。わからない事ってまだまだたくさんあるのだ。元就をもっと知りたい。2015/05/01
夜勤中の寺
11
薄いブックレットだが興味深い。戦国日本東西の大物二人を評論。月並な言い方だが、通説への疑問を呈しながら実像に迫る。信玄に比べ、元就はこういう形で論じられる事が少ないので新鮮。慎重過ぎるマイナス思考の二人の大勢力圏は、防衛による更なる巨大化という意見は頷ける。必然ばかりでなく、偶然の産物ってのもあるもんな。港の経済に関する話も私には新鮮だった。戦国大名を考える上でのヒントを散りばめたナイススケッチ。2012/12/23
金監禾重
4
『本能寺前夜』を読んでいて、「思いがけない巨大な勢力圏」というサブタイトルを思い出し、本書を手に取った。本書は初歩者向けの印象で、「野心だけで動く戦国大名」像を否定するのがサブタイトル。研究者として膨大な知見の裏付けがあるのかもしれないが、「と思う」という言葉を多用しているのが気になる。元就の「大内義長とともに陶晴賢を討ちたい」という手紙は知らなかった。大内家の構成員を自認して(あるいは装って)いたのか。2023/08/01
ohmi_jin
1
結論があるような無いような本。ただし、「信玄の駿河征服が支配欲ではなく当時の政治情勢の結果」「義昭の反信長的行動は朝倉義景や信玄によって動かされたもの」といった話は新鮮だった。2011/07/13