ロシアの歴史家 V.O.クリュチェフスキー

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ロシアの歴史家 V.O.クリュチェフスキー

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  • サイズ A5判/ページ数 407,/高さ 22cm
  • 商品コード 9784779114854
  • NDC分類 289.3
  • Cコード C0023

出版社内容情報

●内容紹介(版元ドットコムより)
ヴァシーリー・オシポーヴィチ・クリュチェフスキー(一八四一~一九一一年)の生涯と学問。国民意識の覚醒を目指したクリュチェフスキーの独特のスタイルと語りの芸術性を備えた講義録に新たな評価を加えるとともに、多面的な歴史家像の構築によって、その可能性を現代に蘇らせた労作。ロシア史研究に新しい刺激を与える好著である。

●目次(版元ドットコムより)
目 次

謝 辞
序 文

  第一部 はじまり
第一章たいと思う者には有益である。
 本書第三部と、最終章を除く第四部は、すでに述べたようにクリュチェフスキーの歴史学の内容とその問題性やそれらと関係した彼自身の宗教観、政治観・国家観(専制についての見解)、教育者としてのクリュチェフスキーなどをテーマ別に考察した部分である。ロシア史にある程度通じている読者ならその細部のさまざまな記述から興味深い事実や見解を数多く知ることができるだろう。しかし、歴史家としての彼の主張とその問題点や政治観を手短に知りたいと思う読者には、少し読みにくい部分かも知れない。それはひとつにはクリュチェフスキー自身の歴史観そのものが簡単には説明できないもので(「彼の仕事を正確に要約することは、彼の表現が正確で明瞭であるにもかかわらず困難である」)、本書の伝記的な部分を含めた全体の読み解きからしか浮かび上がってこない代物であることによる。しかし、クリュチェフスキーの研究が簡単に要約できない主たる理由は、扱われた膨大な量の歴史的事実をクリュチェフスキーが彼独自の歴史観によって記述し、バーンズもそれを出来るだけ忠実に提示しようとしていることによると思われる。歴史において果たした個人の役割についてのクリュチェフスキーの見解は矛盾し、正教・正教会についての評価も、主要な著作においてそれらを無視したにもかかわらず、「ロシア史とロシア文化の不可欠の一部」とも見なし、必ずしも明確とはいえない。専制にたいする評価も時を経て変化し、簡単には規定できない。さらに細分化され、その分野においては極めて実証的であるが、膨大なデータの故に全体的視点を欠きがちな現在の歴史学とは異なって、クリュチェフスキーの歴史学が、実証性の重視とともにロシア国民の歴史を全体的に語り、国民を創りだそうとした複雑な産物であったことも要約を難しくしている。またさらに、社会・国家にたいする使命感や責任感、さらに講義における語り口や著述における巧みな文学的表現といった、現在においては学問内容とはあまり関係がないように思われることがらが大きな意味を持った時代の歴史学であったこともその理由であろう。
 ところでこれらのクリュチェフスキーの歴史学に関する記述によって描き出された彼の歴史観ともいえるもの、それは訳者にとって大きな魅力であった。クリュチェフスキーは一日一六時間を歴史学に捧げた。彼自身「一日に一六時間よろこんで働く気のない学者は生きるに値しない」と述べている。そして、二次文献が少なかったこともあるが、一次資料のみを重視した。同僚たちはクリュチェフスキーが彼らの仕事を参照するのは文献の在処を確かめるためだけであった、と悲しげに書いているという。このような激しく深く静かな探求の中で、理論や思想ではなく、個々の指導者や知識人でもない、地理や風土(「物理的な自然」)、社会の素材(「経済的諸要素、社会的諸利害とそれらを生み出しかつ反映している社会的な諸集団、さらには行政」など)といった、いわばクリュチェフスキーにとっての歴史の実体的要素ともいえるものが、彼の先生たちや同僚を通じた西欧の偉大な歴史家たちの影響もあって、見いだされていくのである。そして、歴史は区切りのない川の流れのようなものであるといった歴史観が形成される。すでに述べたように、クリュチェフスキーの歴史観は簡単には要約できないから、この比喩を理解するには自然性や必然性を重視したクリュチェフスキーや彼の受動的な性格など本書に書かれたことを読み込まねばならない。また、バーンズはクリュチェフスキーが「アナール派の歴史家が『長期持続』と呼ぶところのものを視野に入れていた」と述べているが、このような評価については読者の解釈にゆだねたい。訳者が感銘を受けたのは、この歴史観の基となったクリュチェフスキーの学者・職人的な実証的歴史研究の持つ、歴史の手応えに触れるような感覚であり、歴史の方法論としてわれわれが簡単に語る「実証的」ということの深さと喜びである。クリュチェフスキーは徹底的な原資料の探索と読み込みと現実的な考慮によって一七世紀のパンの価格を推定したが、それは現在でも経済史の研究で使用されているという。彼の実証的研究が持つ凄さの魅力である。そして、このような実証的研究が彼の巧みな芸術的な講義によって国民創生への試みとなりえたことは、当時の歴史研究が、現在の細分化され、同時に膨大でもある歴史研究とは異なっていたこともあろうが、たいへん興味深い。     
 本書は一九九五年に出版された。ソ連邦が崩壊し、「大きな物語」の終焉が語られ、歴史もひとつの解釈・物語であるという歴史学におけるいわゆる「ポスト・モダン」的な見解も広く流布した時期である。穿ってみれば、バーンズはこのような新しい思潮に対してはクリュチェフスキー流の実証的な歴史研究の凄みを示し(歴史に進歩の法則等を見いだそうとする志向をモダンとすれば、ポスト・モダンに連なると思えるアナール学派との繋がりを見いだし)、一方では依然として勢力を保つ重箱の隅をつつく実証的研究に対してクリュチェフスキー流の広い視野に立った語りの歴史学の意味を示したともいえるのである。いずれにしてもモスクワの「田舎者」であったクリュチェフスキー、さまざまな意味において「ロシアの歴史家」であったクリュチェフスキーの魅力は現代にも十分に通用すると思えるのである。
 

内容説明

英語で書かれた初めてのクリュチェフスキーの伝記。独特のスタイルと語りの芸術性を備えたクリュチェフスキーの『ロシア史講義』は、「学際的」なアプローチをとり、同時に「多要因的」であり、その意味では「総合的」であった。本書では、近年「アナール派」とともに広がった「長期持続」の視点があるという評価を新たに加え、クリュチェフスキーの可能性を現代に蘇らせた。

目次

第1部 はじまり(ペンザの「鐘の下で」;「私は学問への道を歩み始めた」;「導きの星たち」―モスクワ大学歴史・文献学部;準備と変化の時期;突破―『貴族会議』)
第2部 モスクワ大学教授(教授生活;外部世界からの干渉;学者)
第3部 ロシア史を読み解く(ロシアおよびロシア人の起源;ロシア史の流れ;教会と宗教分裂―西欧との関係のジレンマ;専制と専制君主の政策―西欧との関係のジレンマ)
第4部 国民を創りだす試み(「国民の教師」;国民形成者としてのクリュチェフスキー;晩年)

著者等紹介

清水昭雄[シミズアキオ]
1949年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程満期退学。現在、志學館大学教授

加藤史朗[カトウシロウ]
1946年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程満期退学。現在、愛知県立大学外国語学部教授

土肥恒之[ドヒツネユキ]
1947年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程満期退学。現在、一橋大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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