内容説明
ホラー映画を観れば恐怖を覚え、小説を読めば主人公に共感する―しかし、そもそも私たちはなぜ虚構にすぎないものに感情を動かされるのか。絵画、文学、演劇、映画などの芸術作品から日常生活まで、虚構世界が私たちを魅了し、想像や行動を促す原理をトータルに解明するフィクション論の金字塔、待望の邦訳。
目次
第1部 表象体(表象体とごっこ遊び;フィクションとノンフィクション;表象の対象;生成の機構)
第2部 表象体の鑑賞体験(謎と問題点;参加すること;心理的な参加)
第3部 様相と様式(絵画的描出による表象;言語的表象体)
第4部 意味論と存在論(架空の存在者をしりぞける;存在)
著者等紹介
ウォルトン,ケンダル[ウォルトン,ケンダル] [Walton,Kendall L.]
アメリカ合衆国の哲学者・美学者。1939年生まれ。コーネル大学で博士号を取得。ミシガン大学で教鞭をとり、現在は同大学名誉教授
田村均[タムラヒトシ]
1952年名古屋市に生まれる。1977年京都大学文学部卒業。1984年京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。現在、名古屋大学大学院文学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
3
『戦争と平和』はナポレオンについての小説であり(表象)、読者はナポレオンを想像するように命じられる。ナポレオンの想像がナポレオンの表象を成り立たせるのが虚構だ。著者は想像をごっこ遊びと捉え、人形を赤ちゃんとして想像するごっこ(make belief)が芸術と関連性を持つと主張する。それが「虚構的真理」を生み出すからだ。例えば、映画『キングコング』のニューヨーク(表象)と合成樹脂の人形(想像)は、人形をキングコングであると命じることで自身を表象する。この規定は後に「ゲームは虚構か否か」という議論を引き出す。2017/07/03
akuragitatata
1
難しい。2022/02/10
hryk
1
さまざまなフィクションの鑑賞体験は子供が木の切り株をクマとみなすごっこ遊びと本質的には同じであるという「ごっこ遊び理論」をベースにして、フィクションを鑑賞してなぜ怖がるのか、虚構的対象の存在をどう考えるのか、といったフィクションをめぐる哲学的問いに答えていく。いろいろな例が挙げられていてすごいなと思う。とても面白い。2017/12/17