内容説明
心理分析の鋭さと人間愛(ピラントローピアー)を兼ね備えた、豊かな示唆と励ましをあたえる教育論。
目次
子供の教育について
どのようにして若者は詩を学ぶべきか
講義を聴くことについて
似て非なる友について―いかにして追従者と友人を見分けるか
いかにしてみずからの徳の進歩に気づきうるか
著者等紹介
瀬口昌久[セグチマサヒサ]
名古屋工業大学大学院工学研究科教授。1959年兵庫県生まれ。1991年京都大学大学院文学研究科単位取得退学。1996年名古屋工業大学工学部助教授を経て現職。2000年京都大学文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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singoito2
8
モンテーニュきっかけ。真の友と追従者、徳を高める詩の読み方と堕落に導く読み方など見分けがたいモノを見分けようとするエッセイ5本。モンテーニュやヤスパースなど緊張感の高い社会の中で生き抜く智恵を誠実に丁寧に追求しているという印象。聖典福音書とほぼ同時期の成立であることを考えると福音書記者の立ち位置を当時の地中海世界全体の中に置き直して見直す、と言う意味でも興味深い。2024/01/03
roughfractus02
7
1295年の全集編纂時に収録された「子供の教育について」は1820年ヴィッテンバッハの文体分析で偽書とされたが、著者の考えに近いとされるその内容は、ビサンチン時代から啓蒙の時代まで影響を及ぼした。1世紀に生きた著者のいう「教育」とは「品性の陶冶」であり、徳のある正しい行いのために自然に備わる素質(φύσις)、学んで得る理(λόγος)、訓練で身につく習慣(ἔθος)を揃えることである。後に教育を貴族的/民主的に分ける「素質」規定の背景には、イデアへの接近が真理の扉を開くというプラトン的世界観が仄見える。2019/06/15
ハルバル
1
教育関係者や子どもを持つ親に有益な示唆を多く含む教育論5篇(ただしルネサンス時代からルソーまで大きな影響力を持った「子どもの教育について」は残念ながら偽書らしい)どの論も読みやすく、現代にも通じる普遍性を持ったテーマが扱われている。別訳でも読んだ「似て非なる友」は、追従者のあらゆるタイプがある種ユーモラスに列挙されていて特に面白かった。引用の巧みさ、鋭い心理分析と根底に流れる人間愛、やはりプルタルコスは古代有数の名著述家だと思う2016/02/03