内容説明
ヒッチコック『サイコ』の精妙な分析から、黒人劇場専用映画、亡命後のフリッツ・ラングまで―映画史を問い直す名著に、書き下ろしの新章を加え、全面改訂。吉田秀和賞受賞。
目次
映画(film)のコミュニケーション変遷史
第1部 映画を見る(サイコアナリシス―映画を見る(聴く)とはどういうことか
記号の視認―亡命映画作家フリッツ・ラング
表象問題としてのホロコースト映画映画の観客はいかなる主体か)
第2部 映画史を書く(列車の映画あるいは映画の列車―活動写真文化史;アメリカ映画のトポグラフィ―D.W.グリフィスのアメリカン・インディアン初期映画;アメリカ映画史の二重化―オスカー・ミショーと黒人劇場専用映画)
映画の身体性/身体性の映画
著者等紹介
加藤幹郎[カトウミキロウ]
1957年、長崎市生まれ。1986年、筑波大学大学院文芸・言語研究科単位取得退学。1987年、京都大学教養学部助教授。1990‐92年および2002‐03年、カリフォルニア大学バークリー校、同ロサンジェルス校、ニューヨーク大学、ハワイ大学マノア校フルブライト客員研究員。1999年、ミシガン大学客員教授。2006年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授(京都大学博士)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かやは
7
映画の発展形式、文化に与えたこと、人の発展にどう帰依したきたか。映画が登場する以前も人の営みはあったという当たり前のことを思い出させてくれた。かなり固い内容で読み進めるのには苦労した。映画は今までありえなかった場所からの視点を見ることができる、音楽や小説とは違う全く新しい体験だった。場所の移動という欲望も満たした。私たちは映画を初めて見た人や、列車に初めて乗った人のめくるめく体験をこの先同じように味わうことが出来るのだろうか?全ての表現方法がそろった焼き増しの世界を生きているようで、少し残念ではある。 2020/10/09
Hatann
6
月刊誌『みすず』にて「ハリウッド映画とは何か」という表題で連載された評論をもとに、映画を見ること・映画史を紡ぐことを纏める。ヒッチコック『サイコ』の分析などを通じ、観客が映画をどのように見るか、映画の大衆を惹きつけるメカニズムや技法を示す。更に、ハリウッド映画の歴史を紐解き、黒人劇場専用映画などの傍流の存在、そのハリウッド主流映画への影響を紹介する。映画は、演劇・写真・文学・音楽・絵画が合成される総合芸術であり、時代を反映するコミュニケーション媒体でもあり、米国がグローバルに覇権を維持する産業でもある。2023/08/20
hitotoseno
4
精緻なヒッチコックの『サイコ』分析に加えてアメリカに亡命したのちもキレを失わなかったフリッツラングの技術、絶賛をもって迎えられた『ショアー』の詰めの甘さ、映画の文法を用意したグリフィスを裏面から攻撃したミショーなど映画史には欠かせないトピックをこれでもかと詰め込んだ見事な映画入門書である。中でも映画と列車の密接な関係を暴いたのには快哉を叫んだ。わかったような口を叩けば、列車ではなく客船ではあるが『タイタニック』があれだけウケたのも映画及び映画観衆築き上げたの綿たる歴史に乗っかった結果だと言えるだろう。2015/12/15
gorgeanalogue
3
蓮實先生ほどではないにしろ、ちょっと癖のある文体だけど(短絡が多い)、とくに「ショア」批判と列車=映画論、そして黒人専用映画論(こんなこと何も知らなかった)が面白い。グリフィス論は私が無知すぎるということを置いておいても、そんなには興奮しない。サイコ論はまあまあ。終章の身体論はもう少しなんとかしてほしかった(これ、編集が悪いと思う)。2019/04/08
TOMYTOMY
2
改訂版を初めて。 なかなか上手く出来てる。 映画を見るきっかけに。2020/01/14