目次
日本語版への序文
謝辞
序言
序章
チューリングテストとその後
自動運転車から宇宙ロボットまで――破壊的テクノロジーとデジタル宇宙
本書の議論
第1章 デジタルな世界
複雑なデジタル・システム
デジタル・ライフ――その理論的視座
第2章 ロボット工学の勃興
テクノロジーとオートメーション
第四次産業革命への懐疑論とその批判
グローバル化とオフショア化
ロボット工学と仕事――私たちの立ち位置
第3章 デジタル・ライフと自己
情報システムとしての自己
タークル――ナルシシズムと新しい孤独
批判的見解
包み込み、保存、デジタルキー
第4章 デジタル・テクノロジーと社会的相互行為
社会的相互行為の制度的な組織化――対面行為およびデジタルなものに媒介された行為のフレームワーク
ボット、トーク、共在
デジタル革命の諸次元――ポータル、脱-同期化、即時性
デジタルなノイズ――沈黙は金か?
第5章 近代社会、モビリティ、人工知能
オートメーション化された自動車移動――グーグル・カー
新しい戦争、ドローン、キラーロボット
第6章 AIと社会的未来
ロボットによる親密性
AI以後の医療
AIを超える民主主義
AIの特徴と公共政策
訳者あとがき
注釈
索引
著者・訳者紹介
前書きなど
日本語版への序文
世界経済フォーラムの創設者であるクラウス・シュワブ(Klaus Schwab)は近年、今日の人工知能(AI)革命が、「人類のこれまで経験したことのないものである」と主張している。シュワブは、スマート・アルゴリズムから高度な機械学習に至るまで、現在のAIの製造には技術的な変革があると考えている。それによって、「物理的な領域、デジタルの領域、生物学的な領域の境界が曖昧になっているのである」。たとえAIが職業的な生活や個人的な生活をいかに変えているかを正確に同定することはできないとしても、この変革については、男女問わず大多数の者が直感的に認識している。AIの成長およびその規制に関する政策と戦略的プラン―日本による(ソサエティ5・0)イニシアティブはその一例である―は、こうした変革を明確に示している。ソサエティ5・0は、中国による新世代人工知能開発計画、EUによる人工知能協調計画、アメリカのAIイニシアティブなど、各国政府の青写真に似ている。しかし、別の角度から見ると、日本のソサエティ5・0は、超スマート社会の青写真として、これよりもはるかに進んでいる。シュワブが正しく指摘するように、AIの現段階は、社会を、制度的な社会的・経済的組織の枠組みを超えたものとしていく可能性を秘めており、実際に日本は、サイバー・スペースと物理的スペースの境界を曖昧にし、日本人の生活様式全体に影響を与える社会・技術的変革を開花させているのである。
インダストリー4・0が今日の製造業のデジタル変革を言い表すものであるとすれば、ソサエティ5・0は経済と社会のデジタル化を意味している。だが研究の面でも公共政策のレベルでも大きな課題となっているのは、AIの技術的な変革の多様な側面を、経済や社会と結びつけること、そしていかに社会、組織、コミュニティがAIの影響による変化のプロセスに適応し対処するに至っているのかを理解することである。これがまさに、本書の目的なのである。一言でいうならば、私の議論は、AIが私たちの時代において挑戦状を突きつけているということに関するものである。デジタル・テクノロジーの大きな波が世界中に押し寄せるにつれ、AIはますます私たちの生活に浸透している。パーソナル・バーチャル・アシスタントやチャットボットから、自動運転車や遠隔操作ロボットに至るまで、AIはいまや、日常生活の大部分に組み込まれている。それは、社会と経済を再編しつつあるのだ。新たなAI革命がもたらすチャンスとリスクは、一般に考えられているよりもはるかに深い。AIによってもたらされる社会変容の可能性は、AIの技術だけの問題ではなく、より複雑な社会的公平性、政治、ガバナンスの問題を提起しているのである。それゆえ、国際的に問われ活発に議論されていくべきなのである。日本によるソサエティ5・0は、こうした挑戦に取り組もうとするめざましい試みである。本書が、日本語に翻訳されたことを嬉しく思っている。
(…後略…)