カウンセリング研究
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48 巻, 4 号
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原著
  • 井上 奈穂子, 濱口 佳和
    2015 年 48 巻 4 号 p. 175-188
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/07/10
    ジャーナル フリー
    本研究は,企業の正社員として勤続するワーキング・マザーの内的変容過程を明らかにし,職業人・母親としての自己が,どのように形成され,互いに影響しあうのか,質的に分析,検討することを目的とした。都内の民間金融企業(1社)に正社員として勤務する女性,および退職した女性21名に対し,半構造化面接を行い,修正版M-GTAを用いて分析した。仕事と育児を両立させるためには,他者や会社からのサポートと同時に,自分の中での割り切りや意志の貫きといった自分で自分を支える気概が一貫して彼女たちの原動力となることがわかった。また,彼女たちには,新たに時間・健康・対人関係への意識を強める内面変化が生じ,物事の段取り・分散注意力といった,仕事と育児共通コンピテンシーが備わることも明らかにされた。それと同時に,育児をしながらの働きづらさ,完璧な両立の諦め,保守的環境改革への願いといった,ワーキング・マザーの本音も浮き彫りになった。職業人として培った自己は,根底に生き続け,彼女たちが,母親役割を強く意識しながらも,自分自身を形成していきたいと考えていることが示唆された。
  • 白川 陽子, 濱口 佳和, 大川 一郎
    2015 年 48 巻 4 号 p. 189-206
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/07/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,咽頭癌・喉頭癌により喉頭摘出術を受け発声機能障害となった患者の特性をふまえて,その心理的支援を行う上での実践的支援タイプの構築を試みた。その際,支援の有効性に大きく影響を及ぼすと予測される手術後の再適応行動の自律的・依存的傾向と,入院生活の感情の安定・不安定傾向に焦点を当て,タイプI「自律‐安定型」,タイプII「自律‐不安定型」,タイプIII「依存‐安定型」,タイプIV「依存‐不安定型」の4類型の仮説援助モデルを提起し,各類型の臨床事例により類型の全体像を示すとともに,類型を構成する次元と項目の妥当性について検討した。本類型は今後,実証的研究と臨床的実践を重ね,有効性を検討する必要がある。
  • 大谷 哲弘, 山本 奬, 藤生 英行
    2015 年 48 巻 4 号 p. 207-217
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/07/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,就職を希望する高校3年生(N=720)を対象に,求人票開示前(5月)と開示後(9月)の進路意思決定に関連する要因(進路選択におけるソーシャルサポート知覚,進路探索行動,進路選択動機)が11月の進路意思決定に及ぼす影響について,短期縦断的に検討した。重回帰分析の結果,求人票開示前(5月)の「親のサポート」「教員のサポート」「友人のサポート」「自己実現志向」が,11月の進路意思決定に正の影響を与えていた。また,求人票開示後(9月)の「親のサポート」「教員のサポート」「友人のサポート」「安定志向」「自己探索行動」「環境探索行動」が11月の進路意思決定に正の影響を与え,「給料志向」が負の影響を与えていた。さらに,求人票開示前(5月)の「親のサポート」「友人のサポート」,求人票開示後(9月)の「親のサポート」「友人のサポート」「自己探索行動」「環境探索行動」において,学科間の差があることが明らかになった。以上のことから,進路意思決定に影響を及ぼす要因の適時性および学科の特徴に着目する重要性が示唆された。
資料
  • 村上 香奈, 山崎 浩一
    2015 年 48 巻 4 号 p. 218-227
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/07/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,青年期にある大学生を対象にソリューション・フォーカスト・アプローチ(SFA)に基づくグループワーク(GW)プログラムを作成し,実践を通してその影響について検討した。具体的にこのプログラムは「特別講義」と位置づけられ,通常の講義内でフォローアップを含めて3回行われた。KJ法に倣った質的分析から,「方法への注目」「変化」「現状把握」「変化なし」というカテゴリーが見いだされた。この結果から,本研究で用いた方法は複数の協力者を対象にしても,現状を把握させたり,具体的な行動を獲得させるというSFA特有の影響がみられることが明らかとなった。さらに,GWによる同年代の大学生との意見交換は,協力者の行動を変化させる重要な役割があり,自身が描く将来へと導くことが示唆された。このように,自身の将来に向けて,今何ができるかを考え,具体的な行動につなげていくという本研究で用いた方法は,大学生の発達への働きかけ,つまり,発達支援として位置づけることができると考えられる。
  • 藤原 健志, 濱口 佳和
    2015 年 48 巻 4 号 p. 228-240
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/07/10
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,日本の高校生を対象に,聴くスキルと外在化問題(攻撃行動)および内在化問題(不安と抑うつ)の関連を明らかにすることであった。攻撃行動ならびに不安・抑うつそれぞれについて下位尺度得点を用いたクラスター分析を行った結果,攻撃行動については5クラスター解,不安・抑うつについては4クラスター解が採用された。その結果,(1)攻撃行動得点の低い人々は,相手の話を遮らずに聴くスキルに長けていること,(2)特に不安・抑うつ双方が高い人々の聴くスキル得点が低いこと,(3)外在化問題と内在化問題を比較した場合に,内在化問題のほうが,より多くの聴くスキル下位尺度との関連において有意であったこと,が示された。社会的スキルと心理・社会的適応感の関連を,一連の過程として検討する必要性が示唆された。
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