日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
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最新号
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原著(量的調査研究)
  • 益満 智美, 佐々木 八千代, 手塚 栞菜, 小西 円, 白井 みどり
    2024 年 32 巻 4 号 p. 400-408
    発行日: 2024/01/29
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    地域在住高齢者におけるコロナ禍の抑うつ状態の変化とその関連要因を明らかにすることを目的とした。2020年11月から2022年12月にかけて,大阪府A市シルバー人材センターの登録者を対象に,ベースラインから第4回追跡まで,5回の自記式質問紙調査を実施した。調査内容は基本属性,主観的健康感,JST版活動能力指標(JST),抑うつ,生活状況などであった。抑うつはGeriatric Depression Scale日本語版15項目版を用いて評価し,5点以上を抑うつありとした。5回の調査すべてに回答した170名を解析対象として,ロジスティックモデルを用いて多要因の影響を調整し,抑うつの有無に関するオッズ比(OR)を算出した。5回の調査で抑うつを有していたものの割合は,27.1%〜32.9%であった。4回の調査で抑うつに関連していたのは経済状況の自覚とJSTであった。経済状況が心配なものは,抑うつに対するORが上昇しており(OR=2.18-4.47),JST高値ではORが低下していた(OR=0.12-0.37)。また,コロナによる生活の変化は,ベースライン調査と第4回追跡調査で確認しており,ベースライン調査では外出頻度減少の自覚(OR=2.48),外出意欲減少(OR=4.65)が抑うつに対するORが高かった。第4回追跡調査では,人との交流方法の変化(OR=3.38),生活の中で困っていることがある(OR=5.99)が抑うつに対するORが高く,仕事があるもの(OR=0.22)は抑うつに対するORが低かった。コロナ禍の抑うつは,その時その時で関連する要因が変化する可能性があり,社会的状況や個人の状況に合わせた支援が必要である。

  • 中澤 沙織, 鈴木 英子, 川村 晴美, 田辺 幸子
    2024 年 32 巻 4 号 p. 409-417
    発行日: 2024/01/29
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    首都圏内の病院に勤務する新卒看護師が認識する実地指導者のサポートとバーンアウトの関連を明らかにする目的で,首都圏内の大学病院および国立系病院に勤務する新卒看護師765名を対象に,バーンアウト(日本版MBI-HSS),新卒看護師が認識する実地指導者のサポート(新卒看護師が認識する実地指導者のサポート評価尺度),個人要因,職場環境要因について無記名自記式質問紙を用いて調査を実施した。有効回答数は539名(70.5%),バーンアウト総合得点は13.51±2.42であった。バーンアウト総合得点を目的変数とした重回帰分析の結果,新卒看護師が認識する実地指導者のサポート得点が低いほどバーンアウトしやすい傾向があることが明らかとなった。新卒看護師が実地指導者に対し自分の状態や状況を伝え,必要なサポートを求める能力を高めることや新卒看護師が必要なサポートを求めやすい環境づくり等の対策が必要であると考える。

  • 久保田 智稔, 冨田 幸江, 横山 ひろみ
    2024 年 32 巻 4 号 p. 418-430
    発行日: 2024/01/29
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    大学病院における集中治療室に勤務する看護師の職業キャリア成熟とその関連要因を明らかにすることを目的として,承諾の得られた日本集中治療医学会に所属している全国の大学病院21施設の集中治療室に勤務する看護師712名に質問紙調査を実施した。回答の得られた217名(回収率30.5%)のうち,職業キャリア成熟測定尺度に欠損があるもの,および看護管理者(看護師長・看護副師長・主任)を除いた193名(有効回答率97.5%)を解析対象とした。職業キャリア成熟を目的変数,個人要因,職場環境要因,看護に対する考え方,人との相互作用に関する要因,自己の受け止め方,自己成長に関する要因,課題解決に関する要因を説明変数とする重回帰分析(自由度調整済み決定係数は0.561)の結果,職業キャリア成熟と関連がみられた変数は「キャリアコミットメント」,「看護師の職業的アイデンティティ」,「自らの短所について改善する努力をしている」,「自らクリニカルラダー研修に積極的に参加している」,「常に新しい知識や技術を学びたいと思っている」の5要因であった。これらの結果から,大学病院における集中治療室に勤務する看護師の職業キャリア成熟を高めるためには,専門分野への関心や思い入れを深め,キャリアコミットメントを高め,職業的アイデンティティを確立していくことが,職業キャリア成熟を培う上で重要である。

  • ─看護学生用生活機能評価尺度(活動面)を基準にして─
    齋藤 深雪, 吾妻 知美
    2024 年 32 巻 4 号 p. 431-436
    発行日: 2024/01/29
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    現代生活におけるメールの普及や家族形態の変化などから,看護学生の生活技術や対人関係能力の低下が指摘されている。看護教育では,看護技術教育と並行して適切な生活習慣の獲得や対人関係技術の向上などを促す学習支援が必要となっている。そのため,看護学生の社会で生活する能力を把握する必要がある。これまでに看護学生用生活機能評価尺度(活動面)を作成し,信頼性と妥当性を確認した。この尺度は肯定的な視点から個人の課題や行為を遂行する能力を測定するものである。本尺度は個人の課題や行為を遂行する能力を質問の合計点で示し,その合計点を活動点という。活動点が高ければ高いほど課題や行為を遂行する能力が高いことを意味する。

    本研究では,看護学生用生活機能評価尺度(活動面)を活用し,看護学生の活動点の実態を明らかにした。1年生から3年生の看護系大学生272名,看護系以外の大学生173名を対象に,属性や生活背景を問う設問と看護学生生活機能評価尺度(活動面)によって構成される自己記入式質問票を用いた調査を実施した。調査期間は2013年11月から2014年7月であった。その結果,看護系大学生の活動点は37.8±6.5点であった。看護系大学生と看護系以外の大学生の活動点に統計的な有意差が認められた。また,看護系大学生は祖母と同居の有無で活動点に統計的な有意差が認められた。

原著(文献レビュー)
  • ─マトリックス分析による検討─
    外間 直樹, 天賀谷 隆
    2024 年 32 巻 4 号 p. 437-442
    発行日: 2024/01/29
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    精神障害に対応した地域包括ケアシステムの構築では,ピアサポート活動が喫緊の課題である。本研究は複数分野のピアサポート活動の研究がどのような視点でなされているのかを明らかにすることを目的とする。検索語「ピアサポート」原著論文で抽出された122文献を研究対象とし,マトリックス分析を実施した。その結果,ピアサポート活動に関する研究の視点は,『当事者や家族の体験や認識』,『当事者や家族の個別的な支援』,『サポートプログラムの運営や評価』,『支援者のスキル』であった。精神障害のピアサポート活動の研究はどのように行ったのかという実践報告だけでなく,ピアサポート活動における地域事業所の組織的な対応,ピアサポート活動における施設と地域の連携のあり方など,精神障害のピアサポート活動の組織的実施体制についてすすめる必要があると考える。

  • ─先行文献からの抽出─
    青森 広美, 平野 裕子, 鈴木 英子
    2024 年 32 巻 4 号 p. 443-452
    発行日: 2024/01/29
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    病院に勤務する看護職の倫理的行動・非倫理的行動を明確にすることを目的に,医学中央雑誌web,CiNii Researchを用いて,キーワード「倫理的行動」and「看護職」or「看護師」により文献を検索し,16文献を収集した。「倫理的行動」と「非倫理的行動」について記述された文を抽出し,倫理原則を参考に,類似性と相違性に着目して分類した。対象文献から病院に勤務する看護職の倫理的行動について,105のコードが抽出され,25サブカテゴリー,15カテゴリー,9つの大カテゴリーに集約された。非倫理的行動は,88のコードが抽出され,22サブカテゴリー,11カテゴリー,6つの大カテゴリーに集約された。病棟に勤務する看護職の倫理的行動は,善行と無害の原則,自律の原則,忠誠の原則,正義の原則という倫理の原則に基づく行動とそれを支える行動[対象の理解]と[他職種との協働],[専門職としての信念]に大別された。非倫理的行動は,倫理の原則に反する行動として,善行と無害の原則,自律の原則行,忠誠の原則,正義の原則の不履行と専門職意識の欠如に大別された。

  • 金田 明子, 叶谷 由佳
    2024 年 32 巻 4 号 p. 453-462
    発行日: 2024/01/29
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    終の棲家に向けたサービス付き高齢者向け住宅における入居者への支援とその課題を明らかにすることを目的として,終の棲家に向けた入居者への支援と課題について言及している16の文献を質的帰納的に分析した。支援として,「入居者の日常生活動作の自立に向けた支援」,「入居者の社会参加と生きがいづくりに向けた支援」,「訪問看護師によるアドバンスド・ケア・プランニングの実施」,「入居者の看取りに向けた医療・介護との連携」の4カテゴリ,課題として「設置主体の看取りに向けた方針の明確化」,「サ高住主導でのアドバンスド・ケア・プランニングの実施」,「サ高住における医療・介護の連携体制整備」,「サ高住職員への死の準備教育と医療知識の教育」,「マンパワーを補完する機器の活用」の5カテゴリを抽出した。今後,サービス付き高齢者向け住宅の職員対象に実践現場での具体的な取り組みについて調査を実施し,現状を把握する必要がある。

原著(質的研究)
  • 日比野 直子, 久保 恭子, 野呂 千鶴子
    2024 年 32 巻 4 号 p. 463-469
    発行日: 2024/01/29
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    在宅重症心身障害児・者(重症児・者)の親が介護力低下をきたす前までに,訪問看護師が行う支援内容の明確化を図ることを目的として,訪問看護師4名に,インタビューガイドを用いた個別面接を行った。発言内容を逐語化,質的データ分析法を用いて分析し,支援に関する内容を「重症児・者と親の不安な思い」,「専門職や機関との連携力」,「地域資源の活用」,「社会と時代の変化に伴う課題」,「重症児・者と家族のライフヒストリー」という5つのカテゴリに集約した。

    訪問看護師は,重症児・者と親の不安な思いを捉えることと,相談支援専門員や保健師との連携が不安定なことから重症児・者や家族が必要な専門職や機関とつながる力をもつ関わりが必要である。また,重症児・者が地域で自律して地域資源の活用で社会生活ができるようにするための工夫と看看連携を促進させることが必要である。さらに訪問看護師は,社会と時代の変化に伴い課題に立ち向かうとともに,親亡き後の重症児・者の人生が希望するものとなるよう重症児・者と家族のライフヒストリーを捉え共に歩むことが必要である。

  • 椙本 真理子, 清水 真由美, 中北 裕子
    2024 年 32 巻 4 号 p. 470-479
    発行日: 2024/01/29
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    生活支援コーディネーター(以降LSC)による住民主体の通いの場設立における高齢者住民の主体性・互助の力を高める支援を明らかにするため,LSC 7名に,半構造化面接を行い質的帰納的に分析した。住民主体の通いの場設立においてLSCは,住民と直接関わりを持ちながら,【住民特性の理解】や【住民の関係性の理解】を深め,住民の主体性や互助の力の現状を把握し,設立支援方針を見極めていた。さらに,高齢者住民の主体性を高めるために,【住民との信頼関係の構築】,【住民への地域状況の発信】,【住民の意見の尊重】,【設立への合意形成】,【運営体制の構築】,【住民の自主性の醸成】という支援を行っていた。高齢者住民の互助の力を高めるために,【気遣える仲間づくり】,【支え合う仕組みづくり】,【互助の育みを見据えた見守り】という支援を行っていた。LSCは,住民主体の通いの場設立において,住民の特性に合わせながらエンパワメントの過程を支援することにより主体性を高めるとともに,住民同士の関係性に合わせた互助の力の基礎づくりをしていた。さらに,LSCによる互助の力を高める支援は,通いの場だけでなく地域における互助の拡大も見据えた支援であることが示唆された。

  • 大島 泰子, 水野 恵理子
    2024 年 32 巻 4 号 p. 480-486
    発行日: 2024/01/29
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,慢性的な抑うつ状態にある気分障害患者の看護における精神科熟練看護師が抱く困難感と対処のプロセスについて明らかにすることである。対象は,精神科臨床経験10年以上の熟練看護師7名であり,半構造化面接を実施した。面接内容を,修正版グラウンデッドセオリーアプローチ法を用いて分析した。

    その結果,精神科熟練看護師が慢性的な抑うつ状態にある気分障害患者の看護実践で抱く困難感と対処に関して,「今ここでのコミュニケーションの難しさ」,「思いに沿うセルフケア支援の難しさ」,「今も先も見えないケアの難しさ」,「気持ちに寄り添いきれない辛さ」,「役に立てているのかわからない苦しみ」,「長く変化がないことへの焦り」,「過去の経験に支えられる」,「小さな変化に目を凝らす」,「寄り添うために意図的に距離をとる」,「変化が見えないなかで関わり続ける」,「信念を迷いながら持ち続ける」という11概念を生成した。この11概念は,さらに「看護介入における難しさ」,「精神科看護師としての揺るぎ」,「やれることを模索する」,「揺らぎつつ信念を持ち続ける」の4カテゴリーに集約し,後ろ2つのカテゴリーからコアカテゴリーは「困難感を抱え持ちながら信念のある看護を継続する」であると判断した。

    慢性的な抑うつ状態にある気分障害患者の看護において精神科熟練看護師が抱く困難感と対処は,精神科熟練看護師の自己を支えるプロセスと考えられ,メンタルヘルス支援と看護における価値・信念への教育的支援により,困難感を抱える精神科熟練看護師の臨床知が育まれ,効果的な看護介入を継続実施しうることが示唆された。

短報
  • 勝間田 真一, 松﨑 広志
    2024 年 32 巻 4 号 p. 487-492
    発行日: 2024/01/29
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    幼若ラットにおける鉄欠乏性貧血の発症と骨代謝回転との関係について,骨代謝マーカを用いて検討した。3週齢Wistar系雄ラット72匹を用い,正常食投与群(C群),鉄欠乏食投与群(D群),D群の摂取量に合わせて正常食を投与した制限給餌群(PF群)の3群に分けた。4週間の飼育観察を行い,1週毎に各群6匹のラットを解剖した。C群とPF群に比較し,D群のヘモグロビン濃度と肝臓中鉄濃度は1,2,3,4週目において有意に低値を示し,心臓重量は1,2,3,4週目において有意に高値を示した。血清中オステオカルシン濃度,尿中デオキシピリジノリン排泄量および大腿骨骨密度は,3,4週目において,C群とPF群に比較してD群で有意に低値を示した。これらの結果から,骨形成と骨吸収の低下は,鉄欠乏性貧血の発症より遅く出現する可能性が示唆された。

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