日本語教育
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137 巻
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一般論文
研究論文
  • ――「初級文型の硬直化」の問題から――
    遠藤 直子
    原稿種別: 研究論文
    2008 年 137 巻 p. 21-30
    発行日: 2008年
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー

     本稿の筆者は,「日本語学習者(以後,学習者と称す)や日本語教師(以後,教師と称す),またはその両者が,初級で既習の文型の意味・用法にとらわれ,当該文型の多様な意味・用法に注意を向けることができなくなる」現象を「初級文型の硬直化」と呼ぶ。このうち,本稿では学習者側の「初級文型の硬直化」の問題に焦点を当てて論じる。議論は,「初級文型の硬直化」という現象が果たして学習者側に見られるかどうか検討するために行ったアンケート調査の分析を中心に展開する。アンケート調査の内容は,日本語教育の初級で学習することが多い初級文型~テモイイデスに終助詞ネを付与した発話を含む会話場面を提示し,~テモイイデスネの使用文脈に対する学習者と日本語母語話者(以後,母語話者と称す)の意識を調べたものである。調査結果では,~テモイイデスネの発話を含む場面に,母語話者の大半が「提案」の用法を想起したのに対し,学習者の過半数が「許可求め」の用法を想起するなど,回答に大きな違いが見られた。

     この結果を受け,初級文型を,終助詞などと融合したより実用的な表現として,中・上級で改めて導入し,発展的に学習させることを提案したい。また,そのことによって「初級文型の硬直化」の問題が解決され,学習者の多様な表現の学びを促進できるのではないかということを述べる。

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