出版社内容情報
万葉集の歌のなかから,旅の歌・東歌(あずまうた)・挽歌を選び,律令制社会のなかで,階級・地域・男女の差を越えて歌の果たした機能を考察する.歌のつくられ,詠まれた契機や〈場〉に着目しながら,1首ずつ丁寧に読む.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきあかね
22
旅の歌、東歌、挽歌、女歌という多様な切り口から万葉集を読んでいく。 感情を率直に歌い上げる恋の歌が多い印象を受けた。通い婚が普通だった万葉の時代、月が小さい時期や雨の降る日は逢えないといった慣習·禁忌があり、逢いたいという気持ちの切実さが伝わってくる。 挽歌でさえも、死んだ人に「あなたを愛している」というだけの違いであって、相聞歌と基本的に通底しているという指摘も新鮮だった。 本書を読み終えてふと、ZARDの好きな曲「My Baby Grand~ぬくもりが欲しくて〜」の歌詞を思い出した。⇒2019/08/12
森
11
薄い本なので入門書かなと思ったら、論文の引用解説ありの専門的な本だった。と言っても講演会のまとめなので話し言葉で書かれていてわかりやすい。万葉集の旅の歌、東歌、挽歌、女歌を、当時の社会制度に絡めて紹介している。班田収授法や駅家制を歌から読み取り、単なる知識ではない具体的なイメージを持つことができた。特に挽歌については、匍匐礼という死者の弔い方など初めて知ることもあり興味深く読んだ。2017/01/19
Ucchy
4
万葉集を旅の歌、東歌、挽歌、女歌の4つの切り口で読み解く。歌を通じてその背景にある社会や制度を読み解くという姿勢で一貫している。万葉集は数も多くて全部を読むことは難しいがたった4つの切り口に絞ってくれたことで読みやかった。今後万葉に親しむきっかけになると思った。2016/10/14
かな
2
新元号の元ネタになった万葉集についてちょっと知りたいなと思って図書館で借りた。歌と解説と歌の背景と、諸学説の紹介がちょうどいいバランスで読みやすかった。歌がオフィシャルな場面で確固とした地位を持っていたのが万葉集の時代で、宮廷である意味公用語として用いられたことが、かえって中央と地方の個性の違いを際立たせていて面白かった。特に東歌(あずまうた)についての考察が興味を惹いた。2019/09/08