出版社内容情報
ヴェニスの将軍オセロウは,新妻デズデモウナとの愛に自らの情熱・信仰・理想のすべてを見いだすはずであった.だが,奸悪な旗手イアーゴウが単純で信じやすいオセロウの胸のうちに点じた嫉妬の念は憎悪の炎となって燃えあがり,ついにデズデモウナを亡ぼさずにはやまぬ.シェイクスピア(一五六四―一六一六)四大悲劇のひとつ.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
猫丸にゃん太
34
シェイクスピア四大悲劇オセロウ、悲しみの氷の中に言葉の宝石が妖しく光る、思わず溜息をつく。白い溜息は雲になって益々高く空を漂う、眼下 広大な海に暗黒の島が一つ、灰色の不穏な煙が島をまとっても誰も知らない、彼以外は。欲望は陰謀の母、陰謀は虚言の父、巧みな嘘は思いのままに世界を騙す、彼さえも。黒いささやきは悪魔の言葉、釈迦の心無かれば人は暗黒に落ちる。黒物語は悪魔の子守唄、月だけが笑う。2015/03/21
みけ
17
勇猛果敢な将軍オセロウ。彼の妻デズデモウナ。デズデモウナに横恋慕するロダリーゴウ、オセロウの忠実な部下キャシオウ。彼らを言葉巧みに唆し破滅へと導くイアーゴウ。主役はあくまでオセロウとデズデモウナであると解説では書かれているけれど、やっぱり一番魅惑的なのはイアーゴウ。他の登場人物を口先一つで思い通りに操り状況を楽しむイアーゴウは格が違う。エデンのヘビの様。『嫉妬をする人はわけがあるから疑うんじゃないんです、疑い深いから疑うんです。嫉妬は自分で生まれて、自分で育つ怪物でございますよ。』は耳が痛い。2019/01/17
tokko
17
シェイクスピアの四大悲劇と言いつつも、ついついイアーゴウのしゃべくりに目がいってしまって「悲劇…なのかなぁ?」と思ってしまう。加えてオセロウの(嫉妬に狂っていたとはいえ)ハンカチに異様に執着する言動といい、喜劇とすら思えなくもない。…と、まるで悲劇に似つかわしくない態度で読んでいたら、「解説」にちゃんと書いてました。これを「ハンカチの喜劇」と皮肉った批評家がいたんですね。でも、思わず吹き出してしまう悲劇があったっていいんじゃないかなぁ。(ダメか)2016/12/19
おせきはん
15
ムーア人であることにコンプレックスを感じていたと思われる将軍オセロウの弱みをついた旗手イアーゴウの謀略に、オセロウが騙される悲劇です。嫉妬にかられ、次から次へと嘘を重ねるイアーゴウと、それを無条件に信じてしまうオセロウの姿は、悲劇でありながら、人間の愚かさを浮き彫りにしていて、ある意味、滑稽でもありました。嫉妬と安易に人を信じることの恐ろしさ、肝に銘じます。2019/11/21
くらすけ
10
人種差別的な観点もありそうなど気になる点もあるが、そうした文化的な特徴も含めて、異世界に行ったような面白さがシェイクスピアの作品にはある。オセロウはハムレットやリア王などの他の作品と異なり、神秘的要素がない。その分、昼ドラの様なリアリティを感じられる悲劇と思う。2023/12/10