内容説明
松江から熊本へ。日本での生活体験が広がるにつれ、小泉八雲の日本理解も哲学的思索へと深まってゆく。古来、日本人は樹や泉、鏡などの中に「霊的なるもの」を感じ、信仰の対象にしてきた。その日本の文化と精神の流れを、メタフィジカルな次元で捉えようとする。『九州の学生たちと』『博多にて』などの佳作を中心に、東方の国日本を巧みに描いた味わい深い作品集。
目次
九州の学生たちと
博多にて
生と死の断片
悲願達成
門つけの歌
ハル
日本の俗謡にみられる仏教的なもの
環の中で
月が欲しいという願い
セレナーデ〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
8
「人は苦しい境遇で見たり聞いたりしたことをいちばん永く記憶する」(14ページ)。確かに、言われた方、虐待やいじめられた方は、一生、記憶から消えない。評者もいじめられたのでそう思える。宮川和一郎は「いかに偉大な学者となったとしても、死んだら後になにが残るか。骨だけである」(38ページ)という。一理あるが、著作物として後世に参考文献となるではないか。「人間というものは、むしろ自分に痛みをもたらすものをこそ、最も愛する」(87ページ)。その対象にもよるだろうが。Mか?(苦笑) いじめた側はいじめられた側に謝罪。2013/01/25